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「ユウキは新しい一歩を踏み出した」アルファタウリ代表も評価、目の色変えて3年目に臨む角田裕毅が熱望した存在とは
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool
posted2023/03/23 11:01
開幕戦、第2戦ともに11位と惜しくもポイント圏外だった角田。第3戦オーストラリアGP以降で入賞を狙う
ヨーロッパで一人暮らししながらF1を戦っていることを案じた父親から「いつか息子を手伝ってください」と、パドックで顔を合わせるたびに丁寧にお願いされていた宮川だったが、本人から直接リクエストが来るまで自分からは動かなかった。
初めて話し合いを持ったのは、昨年の最終戦アブダビGP。マネージャーへの就任を打診された宮川は回答を保留した。アレジと小林のマネージャーを経験したことで、宮川はそれがいかに大変な仕事であるかを知っているからだ。小林の後にも2人のF1ドライバーからマネージャーの要請を受けたが、宮川はいずれも断ったほどだ。
しかも、現在のF1は年間20戦以上もある。となれば、1年のほとんどの時間、ある意味、自分の人生をドライバーに捧げる覚悟が必要となる。宮川はそこまでする価値を即座に見出せなかったため、角田の要請に首を縦には振らなかった。
宮川を翻意させた角田の熱意
それでも、角田はあきらめなかった。
「全戦、同行しなくてもいいんです。マリオさんは僕と同じイタリアに住んでいるし、日本のことも知っている。そして、何よりF1のことをよく知っています。そういう人に見守っていてもらいたいんです」(角田)
角田は自宅があるファエンツァから宮川がいるトリノまで、自ら車を走らせて何度も会いに行った。その熱意に宮川の心が動く。
「ユウキはいま、ひとりで頑張っている。私が持っているF1の経験や人間関係が彼のサポートになるのなら、可能な限りお手伝いしよう」(宮川)
宮川が正式に角田のマネージャー役を了承したのは、今季開幕1カ月前のことだった。
角田が一連の行動をとった理由は、今年こそ満足する結果を残したいからだ。
「今年こそ、自分のベストなパフォーマンスを出したいんです。1年目は自分の感情をコントロールできなくて空回りして、2年目はその部分は改善できたのですが、シーズンの途中から契約のことでいろいろとあって、肝心なところで焦ってミスを犯してしまった。だから、今年は自分のパフォーマンスを出し切るために、ドライビングに集中したい。それができたら、必ず良いリザルトがついてくると信じています」