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「日本のプロ野球を…なめるなよ…」WBCは“世界甲子園”だ…大谷翔平もヌートバーもスゴいけど、“NPBファンが喜んだ”巨人4番・岡本和真の3ラン 

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中溝康隆

中溝康隆Yasutaka Nakamizo

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posted2023/03/18 17:00

「日本のプロ野球を…なめるなよ…」WBCは“世界甲子園”だ…大谷翔平もヌートバーもスゴいけど、“NPBファンが喜んだ”巨人4番・岡本和真の3ラン<Number Web> photograph by AFLO

準々決勝イタリアに勝って喜ぶ、大谷翔平とヌートバー、近藤健介

 さらにヌートバーという、日本球界にとってもまったく新しい文脈のスターも誕生した。不動の「1番・中堅」として、全5試合で安打を放った背番号23。ヌートバーの加入は、このチームに爆発力と勝利への意志を加えてくれた。数カ月前まで日本ではコアな野球ファン以外にはほぼ無名の存在だったが、今ではペッパーミルに久美子ママまで、ワイドショーでも取り上げられる世間に届くスター選手になっている。今後、日本でのCM出演や、スポーツニュースで他の日本人選手と同列にカージナルスでの打席結果が報じられるかもしれない。WBCという大会は、当初はMLBの市場拡大と国際化という目的も掲げられていたが、ヌートバーの「侍ジャパン参加をきっかけに日本でMLBを広めることに成功した」という功績は、まさにそれを体現した形となった。もちろん、“たっちゃん”の持つひたむきさと熱さが、世界甲子園と相性が抜群だということを見抜いて選出した栗山英樹監督のファインプレーでもある。

「NPBを…なめるなよ…!!」

 根底にあるのは「世界甲子園」に「少年ジャンプイズム」……って、そりゃあ日本でWBCが世界最高クラスの大人気コンテンツになるわけだ。場外グッズ売り場では徹夜組も出る争奪戦。地上波テレビの情報番組が朝からこぞって大谷やヌートバーのサイドストーリーを報じ、『報道ステーション』の冒頭30分でWBCを特集するような異様なフィーバーぶりは、野球好きとしては誇らしい反面、普段は日本のプロ野球を熱心に追っている身としては、少し寂しさを感じていたのも本音である。

 確かにメジャー組はとてつもなく凄い。令和の世の中が「世界を舞台に戦う」ストーリーを欲しているのも分かる。でも、NPBにもいい選手はいるんだよというプロ野球ファンの複雑な心境。少年ジャンプイズム繋がりで書けば、『ドラゴンボール』で、ピッコロが最強サイヤ人たちに向かって「地球を……なめるなよ……!!」と口にしたが、まさに「NPBを……なめるなよ……!!」的な心情が心のどこかにあったのも事実だ。

 だから、岡本和真の劇的な3ランアーチや右手小指に故障を抱えながらタイムリーを放った源田壮亮、ピンチで見事な火消し役をこなした伊藤大海に試合を締めた大勢らNPB組の活躍はやっぱり嬉しかった。打順を下げた悩める若き主砲・村上宗隆にもタイムリーを含む2本の二塁打が出た。今大会の日本戦は、毎試合テレビ視聴率40%超えの国民的行事。ここから、プロ野球の選手を知る野球ライトユーザーも多いだろう。W杯の盛り上がりをいかにJリーグの集客に繋げるかと同じで、WBC特需のあとの大谷もダルビッシュもヌートバーもいないNPBをいかに世間に届かせるか……というリアルな課題がある中、多くの選手が“NPBの意地”みたいものを見せてくれたわけだ。祭りはやがて終わり、じきペナントレースという日常がやってくる。

【次ページ】 “WBCで名前を知られた”初めての巨人4番打者

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