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「“屈辱”と表現するのも恥ずかしい」韓国人記者が冷静に振り返る惨敗の“韓日戦”「ダルよりイマナガが怖かった」「ヨシダ“大型投資”の理由がわかった」
text by
姜亨起Kang Hyeong Gi
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/03/13 09:40
第2先発としてゲームを引き締めた今永(左)と、勝負強さを発揮した吉田。韓国メディアは大谷同様にその力を認めた
大谷や村上宗隆(ヤクルト)、岡本和真(巨人)と大柄な選手が並ぶクリーンナップのなかで、身長173cmと比較的小柄な吉田がキム記者にはひときわ目立って見えたようだ。
「決して大きな体格ではないはずなのに、誰よりも強大な存在感というか。今永がダルビッシュより怖かったなら、個人的に吉田は大谷よりも怖かったですよ」
そして、最後に挙げられたのがラーズ・ヌートバー(カージナルス)だ。今やお馴染みとなった彼のペッパーグラインダー・パフォーマンスも韓国では「フチュ(“コショウ”の韓国語)グラインダー・セレモニー」と呼ばれているが、キム記者は「あらゆる面で優れていた」と評価を惜しまない。
「彼の選出について日本国内で一部、懐疑的な見方があったと聞いていますが、結果で証明しましたね。3回のタイムリーは日本を盛り上げ、韓国の投手陣を揺るがす一打になったし、5回で見せたダイビングキャッチには自分も思わず声を出してしまいました」
実はキム記者、2月中旬にカージナルスのフロリダキャンプを現地取材した際、ヌートバーに「韓国からわざわざ来たのに申し訳ないが、日本が韓国に勝つよ」と目の前で伝えられた韓国報道陣のうちの一人。
当時を回想して「あの言葉が現実のものになってしまいましたね」と苦笑いしつつも、「今回の日韓戦で一つひとつのプレーを見てみて、やはりメジャーリーガーは別格だなと実感しました」と、ヌートバーの活躍ぶりを称えていた。
敗戦が韓国球界に突きつけた現実
日韓戦の大敗直後、選手たちがお互いに言い合ったのは「自分のせいで負けた」という謝罪の言葉だった。特に2008年の北京五輪金メダル、2009年の第2回WBC準優勝と韓国野球の全盛期を知るキャプテンの35歳キム・ヒョンス(LGツインズ)は、チームメイトに「申し訳ない、すまない」と謝り続けたという。
だが、ショッキングな敗戦からも立ち上がらなければならない。解説として東京ドーム現地で試合を見守った元中日のイ・ジョンボム氏は、「我々にさまざまな課題をもたらした日韓戦だった。この経験が、今後の韓国野球に大きな滋養分となることを願う」と球界復権に思いを込めた。同じく解説を務めた元オリックス、ソフトバンクのイ・デホ氏もまた、「若い選手たちにとって成長のきっかけとなるはずだ」と後輩にエールを届けた。
日本で残酷な現実を突きつけられた韓国野球。もはやこれ以上落ちるところはないだけに、この先はどん底から這い上がるしかない。
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