濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「えっ、もうリングに?」「スポンサー広告が…」ぱんちゃん璃奈の“疑問が残るリング復帰”で記者が見た「信じられないくらいの強さ」とは?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/03/11 17:00
3月5日、エキシビションマッチにてリング復帰となったぱんちゃん璃奈
重要なのはイメージよりも“具体的な結果”
ぱんちゃんの意識は、あくまで応援してくれるファンや関係者のほうを向いている。“外野”、“世間一般”についてはそこまで気にしていないのだろう。実際、SNSの顔も名前も分からない人間たちより、直に接する協力者たちのほうが大事なのは当然のことだ。
ましてぱんちゃんの本業は格闘家だ。試合をして勝つこと、試合をしてチケットを売ることが仕事である。たとえばバラエティ番組やCM出演をメインとするテレビタレントなら、能力以外にも漠然とした“好感度”のようなものも重要だ。だからSNSの使い方も“嫌われない”、“物議を醸さない”ために慎重になる。
だがぱんちゃんの場合、重要なのはイメージよりも具体的な結果だ。自分にいい印象を持ってくれるファンがチケットを買う。わざわざ金を払ってヤジを飛ばしにくる人間など、そうはいない。
事件の前から、ぱんちゃんには“アンチ”がいた。心ない言葉に傷ついてもいた。だがどこかの段階で吹っ切れたのだろう。事件後はアンチツイートの酷さがさらに増していた。犯罪者には何をしても構わないと言わんばかりの者もいた。結局どれだけ謝ったところで、アンチが態度を変えることはないだろう。彼らに向けた言葉や態度が、一体何を生むのかと筆者も思う。
ぱんちゃん璃奈の生き方
エキシビションを取材して感じたのは「今のぱんちゃん璃奈は相当に強い」ということだ。怪我で蹴りの練習ができない間はパンチを磨いた。本人は「難しかった」というものの、その成果はエキシビションからも感じられた。ジャブでペースを作り、要所でラッシュ。ボディ打ちを混ぜた連打には迫力があった。
これにもともと得意な蹴りが加わり、新たなファイトスタイルが確立されれば、かなり面白いことになる。
そして、だ。“外野の雑音をシャットアウトするメンタル”という意味でも、ぱんちゃんは信じられないくらいに強い。天然でも鈍感でもあるのだろうし、SNSから届く罵倒や中傷に絶望したという面もあるだろう。
いずれにしても「何があっても応援する」という身内だけを見て、強くなること勝つことだけを考える。それができるのが今の彼女だ。そこに至るまでの気持ちを考えると天を仰ぎたくなるし、SNSを見ると「誰かぱんちゃんを諌める身内はいないのか」とも思う。
だがそれはそれとして、ぱんちゃん璃奈はこれからさらに強くなっていくだろう。時々、身内ならざる我々を驚かせたり呆れさせたりしながら、アンチを怒らせながら、リングでは輝く。それも一つの生き方だ。
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