濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「えっ、もうリングに?」「スポンサー広告が…」ぱんちゃん璃奈の“疑問が残るリング復帰”で記者が見た「信じられないくらいの強さ」とは?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/03/11 17:00
3月5日、エキシビションマッチにてリング復帰となったぱんちゃん璃奈
客席からは「ぱんちゃん、おかえり」といった声や拍手が送られた。ヤジやブーイングは聞こえなかった。ぱんちゃんの前にマイクを握った対戦相手、坂本瑠華も会場の雰囲気を作ったと言っていい。
「こんなオファーをしてくださって……」
そう言って涙した坂本。ベルトを返上したぱんちゃんに「絶対もう一度ベルトを獲ってください。私もいつか強くなって、絶対その舞台まで行きます」とエールも送った。
「土木ネキあってのリング復帰」だった
坂本は“1分間格闘技”BreakingDown(ブレイキングダウン)で注目された選手だ。3人の子供を育てながら格闘技と土木業に励み、ブレイキングダウンでついたニックネームは“土木ネキ”。職業へのプライドもブレイキングダウン参戦のモチベーションになっている。大会の解説やオーディションの審査を担当していたぱんちゃんとは以前から面識があり、筆者も親しげに会話する2人の姿を見たことがある。
坂本にとってぱんちゃんは雲の上の存在であり、憧れ。対戦を望んでもいた。ただ坂本はプロのキックボクサーとしてデビューしているものの、ぱんちゃんとの実績の差は明らかだ。事件後の初リング、エキシビションという特別なシチュエーションだから実現した顔合わせであり、そのことを分かっているから、意外なチャンスに坂本は泣いた。
その涙に“ほだされる”ようなところもあったし、大会自体がKNOCK OUTのオールスター戦とも言える豪華なマッチメイク。KOも多く盛り上がった。それだけ、ぱんちゃんに向けられる意識が(よいものでも悪いものでも)薄れたようにも思える。
「批判されるのを覚悟で対戦してくれた。直前にも試合しているのに急きょ(エキシビションを)受けてくださって」
ぱんちゃんは坂本への感謝を何度も口にした。以前「レベルが違う」と発言したことも反省しているという。様々な意味で「土木ネキあってのリング復帰」だったことは間違いない。
ケガの回復は良好で、2カ月以内に正式な復帰戦がしたいとぱんちゃんはコメントした。今回はあくまでエキシビション。蹴りを使うキックボクシングの公式戦こそ、本当のカムバックだ。
エキシビションでの姿に取材記者が感じた「疑問」
だがやはり、彼女に対しては疑問が残る。謝罪会見と復帰会見を同時に行なった時から、それは変わらない。
エキシビションでのぱんちゃんは、頭を下げる姿と同時に笑顔を見せたし拳を高々と突き上げてアピールする場面もあった。反省とお詫びの気持ちを見せるはずの場面で、それはどうなのか。いや自由ではあるのだが“外野”、“世間一般”がどんな印象を持つのか想像していないのだろうか。