令和の野球探訪BACK NUMBER
“ずっとスタメンの男”牧秀悟(24歳)は侍ジャパンを世界一に導く? 恩師たちが語る“牧を外せない”理由「この子を育てられなかったら…」
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/03/09 11:02
178cm・93kgの体格からあふれるパワーだけでなく、俊敏性も魅力の牧秀悟(24歳)。各世代で信頼を勝ち取ってきた男は、WBCでもきっと頼りになる
「物をちゃんと言えるんですよね。先輩たちとも遠慮せずに試合中にしっかりコミュニケーションが取れる。とにかく野球が好きで、勝ちたいという気持ちがあるからだと思います。暇さえあれば自主練習をするなど、やるべきことをやって、言うべきことを言っていたので先輩からも生意気とは捉えられなかった。仲間思いでもありましたから同級生や下級生にも慕われていました」
寮生活だったため、夕食をサッと食べ終えると、すぐさまバットを持ってグラウンドに向かっていく。そんな牧の姿を見ていた櫻井さんは「この子を育てられなかったら、指導者としての力量が低いということだな」と使命感、責任感を強くした。
高2年からセンターを任された
入学以降、一度も体重が落ちることのなかった体つきはどんどん逞しくなり、一方で俊敏さも磨かれ、守備範囲の広さから2年夏から中堅手を任された。
当時の松本第一は甲子園初出場への気運が高まっており、3季連続で春の北信越大会に出場。牧自身も長打力のある遊撃手としてNPB球団のスカウトに知られるようになっていった。
正面の打球処理が苦手だったが、2年冬に櫻井さんはノックで徹底的に正面へ緩いゴロを打ち、足を使って捕球することを染み込ませた。こうして守備も欠点でなくなると、注目度はさらに上がった。
しかし、甲子園につながる秋や夏の県大会では思うような結果が出なかった。特に2、3年の夏にいたってはどちらも県大会初戦で公立校に敗れ、スカウトの評価は上がりきらなかった。
高卒プロを念頭に置いていた牧だったが、この頃から大学進学を視野に入れ始めた。2学年上の先輩である百瀬大騎(元DeNA/現・同球団広報)がプロの世界で苦しんでいたこともあり、「4年後にドラフト上位を目指そう」と櫻井さんと誓いあったという。
進学先は、進路を迷っていた頃から熱心に声をかけ続けてくれた清水達也監督(当時はコーチ)が率いる中央大。そこでもう一度プロの夢を追いかけた。