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村上茉愛(26歳)は元体操選手の男性と結婚…“アスリート同士の結婚”はなぜ多い? 当事者夫婦たちに聞いた「気持ちが分かりすぎる部分も」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2023/03/01 17:30
東京五輪でのメダル獲得など、体操選手として輝いた村上茉愛。先日、元体操選手でトレーナーの男性との結婚を発表した
潮田「気持ちが分かりすぎる部分もありました」
「アスリート同士の結婚なので、気持ちが分かりすぎる部分もありました。いいときはいいんですよ。チームが勝てないとき、出場できないとき、よくないときに苦しんでいる姿を横で見ていて、なんて声をかけたらいいんだろうと考えることはありました。自分が現役のとき、『そんなに気を遣われても』と思うときもありましたし、腫れ物に触るみたいなのも違うじゃん、と思ったりしたので、あえてフラットを心掛けていたけれど、話しづらいなあというときはありました。
ただ、夫も私がアスリートとして頑張ってきたのを認めてくれていました。例えば、頑張れ、というひとことが癇に障ること、あるじゃないですか。でも私が言う『頑張れ』は、アスリートがどれだけプレッシャーがあって大変なのかを経験しているからこそ、腑に落ちるというのはあると思うんですね。そういう部分では同じアスリートとして共有できるというのは大きかったかもしれない」
身近な例で言えば、出版の世界には「校了」という書籍や雑誌を刊行する手前の重要な工程があり、ちょっと前なら雑誌の校了の週には会社に泊まり込んで数日家に帰らないことも珍しくなかった。「校了だから」と言えば、同業同士なら「あ、忙しいんだな」と推測ができる。でも出版の工程を知らなければ、いくら説明を受けても「実感」を持つことは難しいかもしれない。
想像力をどこまで持てるか、その上で共感を持てるか。それがよい関係を築くうえで重要であるとは言っても、異なる世界の人間同士では案外容易ではない。アスリート同士の結婚が多い理由には、そうした普遍的なテーマもまた横たわっているのかもしれない。
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