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女子体操界で続く“深刻な怪我”のナゼ? 全日本選手権で14歳と20歳が棄権に「偶然という言葉で済ますのは…」背景に技の難化、選考のプレッシャー
posted2023/04/28 06:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
JIJI PRESS
4月20日から23日にかけて行われた体操の全日本選手権で、大きなアクシデントが相次いだ。
女子決勝が行われた22日、優勝候補と目されていた1人、昨年の世界選手権代表で予選3位につけていた山田千遥が跳馬の着地の際に左膝を負傷。今月の世界ジュニア選手権個人総合で銀メダル、今大会予選1位の山口幸空も平均台の着地で、同じく左膝を負傷した。2人は立ち上がることができず、担架で運ばれた。
大会終了後、山田は左膝前十字靱帯断裂と診断され、5月8日に手術することが明らかになった。また山口は左膝前十字靱帯損傷であったことを自ら語っている。
2人ともに大きな怪我を負うことになったが、全日本選手権の場で優勝を争うトップ選手にアクシデントが相次いだことは波紋を投げかけた。それは偶然の出来事だったのか、あるいはそうではないのか。
熾烈な代表選考、選手が明かした“相当なプレッシャー”
今大会以前にも、女子の有力選手には怪我が相次いでいた。例えば昨年の全日本選手権個人総合で優勝し、9年ぶりの高校生チャンピオンとなった笠原有彩。世界選手権代表に選ばれていたが、開幕を控えた練習中に跳馬で左膝前十字靱帯損傷の怪我を負い、大会欠場を余儀なくされた。2021年10月の世界選手権では畠田瞳が段違い平行棒の練習中に落下し、中心性脊髄損傷と頸椎打撲傷の診断を受けた。
長年日本代表を支えてきた村上茉愛や寺本明日香もしばしば怪我と闘ってきた。寺本の場合、2020年2月にアキレス腱を断裂、懸命の努力で復帰を果たしたが、競技人生のなかで大きな影響を受けることになった。
全日本選手権で渡部葉月に次ぐ2位に入った宮田笙子(昨年の世界選手権代表)も2月に右足のかかと骨折の診断を受けた。しかし大会が世界選手権代表選考を兼ねていることから、完全ではない状態での出場となっていた。
試合を終えて、宮田は相当なプレッシャーがあったことを明かすとともに、こう語ったという。
「多くの人から、『代表に絶対に入らないといけない』という言葉があって。自分でも分かっているけれど、練習の過程を考えるとそこがプレッシャーになっている部分があったので、正直、自分の中でも辛いなと思う部分だったと思いました」