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「もう顔面蹴るのはやめてよ」オカダ・カズチカの強さにノアのファンも諦めのため息…清宮海斗は“圧倒的な差”を埋めることができるのか?
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2023/02/25 17:00
2月21日、ノアの東京ドーム大会で清宮海斗にドロップキックを放つオカダ・カズチカ。格の違いを見せつけ、時間無制限の1本勝負は16分32秒で決着した
というのも、もともと30分1本勝負だったこの試合は、清宮の強い要望により当日になって急きょ時間無制限1本勝負に変更されていたのだ。時間切れ引き分けに終わる可能性を排除し、オカダと完全決着をつける。もちろん、勝つのは自分。清宮の思いはそれだけ強かった。
新日本を頂点としたプロレス界のヒエラルキー
この試合を実現させたのは、清宮の執念だった。
昨年1月8日の横浜アリーナで、武藤と組んでオカダ、棚橋弘至と相対した清宮は、試合に敗れるとリング上で号泣。オカダに「こんなんで泣いてんじゃねえぞ。帰れさっさと! 邪魔だ!」と言われ、悔しさと共に下がっていった。
それから1年が経った今年1月21日の横浜アリーナ。この間に武藤とのシングルマッチに勝利し、シャイニング・ウィザードを筆頭に技を受け継いだ清宮は、自身2度目のGHCヘビー級王者となっていた。稲村愛輝をパートナーにオカダ、真壁刀義と戦うことになった彼の狙いは、ひとつしかなかった。
しかし、オカダはそんな気持ちに付き合う意味がないとばかりに無関心を貫いた。すると、清宮はオカダの背後から顔面を蹴撃。これが発端となり大乱闘が勃発、試合はノーコンテストとなったが、引き離された清宮はマイクを持つとシングルマッチを要求する。さらに「ビビってんのか? ビビってるんだったら帰れ!」と挑発してオカダを振り向かせ、絶大なインパクトを残してみせた。
すると、早速翌日に1カ月後のシングルマッチが発表された。オカダは試合のボイコットを繰り返し明言していたが、2月12日のノア大阪大会のメインイベント後に乱入し、清宮をレインメーカーでKO。清宮だけでなくノアのファンにも「絶望を味わわせてやる」と宣言した。
そんな経緯で実現した遺恨試合は、ノア側から見れば、新日本プロレスが頂点に君臨している現在の日本のプロレス界の景色を変える絶好の機会でもあった。
東京ドーム大会の後半戦4試合には、その全てに新日本の選手の名前があった。NOSAWA論外の引退試合には外道と石森太二が出場。オカダvs.清宮の前にはジュニア王者同士のシングルマッチも行われ、高橋ヒロムがAMAKUSAに勝利した。そして武藤の引退試合の相手は、ノアの選手ではなく新日本の内藤哲也だ。この現状を歯がゆく感じないノアの選手やファンはいないだろう。
オカダvs.清宮は、その1試合だけで全ての印象を覆すだけの可能性を持っていた。