2月11日のフィラデルフィア・76ers戦は約5分、13日のニューヨーク・ニックス戦は大差がついた終盤の約4分をプレーしたのみ。前半戦の最終戦となった15日のマイアミ・ヒート戦では、ついに出番はなかった。幸いにもジャック・ボーンHCと渡邊のコミュニケーションは円滑のようだが、今後、ネッツは少なくともしばらくは新加入選手を重用する方向の模様だ。

　チームの激震の余波をまともに受け、渡邊を再び襲ったローテーション落ちの危機。依然として頻繁に笑顔を見せる明るさは変わらないものの、やりきれない思いはもちろん胸中にあるはずだ。 

「自分の中ではまだ整理は仕切れていない。ただ、これだけ大きな額が動く世界にいるので、カイリーがフロントと合意できなかった部分もわかります。KD（デュラント）はとにかく競争心が強く、勝ちにこだわっている選手。彼らを知っているからこそ、トレードは理解できる部分もあります」

　2大スターの移籍直後にはそう声を振り絞っていたが、特に今季の渡邊はデュラント、アービングと抜群の相性の良さを感じさせていただけに、やはり残念ではある。

ファイナル出場も期待させた快進撃

　キャンプ時の無保証契約から這い上がり、ブルックリンの人気選手となった渡邊の今季の快進撃は劇的で、感動的ですらあった。身体能力やパワーはアメリカ人選手にヒケを取ったとしても、献身的な姿勢、ハッスル、努力に裏打ちされた技術向上でNBAでも生き残っていけることを28歳のサウスポーは示してくれた。その過程でリーグを代表するメガスターであるデュラント、アービングとケミストリーを築いたことは、渡邊のキャリアの、いや日本バスケットボールの財産となるのだろう。

デュラント、アービングらといい関係性を築いていた渡邊雄太　©︎Getty Images

　このままネッツが勝ち進み、渡邊がNBA ファイナルの大舞台で躍動する姿が見られるのではないか……。そんなビューティフルな夢を見たファンは日本には数えきれないほどいたはずで、筆者もその中に含まれることを否定しない。そういったドリームシナリオが瞬く間に書き換えられたのだから、渡邊がこれまで積み上げたものが崩れたように感じたとしても不思議はなかったはずだ。

　ただ、もちろんプロである以上、何があっても前に進まなければならない。今後、新体制のネッツとともに、渡邊も新たな方向に足を踏み出すことになる。救いなのは、オールスターブレイク突入前の渡邊が依然としてポジティブな姿勢を保っていたことだ。

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