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「もう何もかもダメ」三浦佳生が乗り越えた“足が震えた最下位”「特に思い入れのないポケモンに助けられました(笑)」<四大陸選手権を最年少V>
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2023/02/13 17:01
自己ベスト更新でも優勝が確実ではない中、快心の演技を見せ優勝を決めた三浦佳生。これまでの発言を紐解くと…
「(演技に)入るまでに集中できませんでしたし、もう入ってからも足が震えて、ステップなんて素人目にも分かるくらい震えていました」
「前の滑走者がイタリアの選手でさらに盛り上がってるところがきて、そこで集中できなかったのが自分に足りない部分です。何もかも足りませんでした」
そしてこう前を向いた。
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「もうこの悔しさを胸に全日本、絶対やってやろうと、ほんとうに優勝するつもりで。本気でやってやろうと。そして来年ファイナルに戻ってきて絶対頂点を獲る」
鍵山から渡されたポケモンのぬいぐるみ
全日本選手権でもショートプログラム13位の出遅れが響き膝に手を突いた。だが、そのままでは終わらなかった。フリーでは2位、総合でも6位と巻き返した。
「(鍵山)優真と(佐藤)駿が助けてくれました。みんなの力で立て直すことができました」
ショートプログラムの後、佐藤からは「お前なら大丈夫」と声をかけられた。3人で大阪城に行き、鍵山からは「これ持っていれば大丈夫だから」とポケモンのぬいぐるみをプレゼントされたという。
「なんでか、特に思い入れのないポケモンに助けられました(笑)」
悔しさも味わった。大会を始め、起伏もあり、そのときどきに湧き上がる思いがあった。でも言葉はいつだって、率直な思いを、闘志と思いの強さをそのままに伝えていた。率直だからときにユーモアを帯びて聞こえもする。それも三浦の個性を形作っている。
三浦の周囲には、全日本選手権のエピソードが象徴するように、手助けしてくれる仲間や先輩も多い。それもまた、多分に三浦の性格が引き寄せている。
今日は、ビューティー(美女)は…
四大陸選手権後の記者会見では、フリー『美女と野獣』(Beauty and the Beast)に絡めて恒例となっている「あなたはどちら?」との質問を受けた。
「今日は、ビューティー(美女)は最後のコレオのところで僕の横に現れたくらいで。自分がビューティーにはたぶんなれない、ちょっとビューティー成分がないので、自分はビースト(野獣)の方が似合っているかなって感じがします」
記者たちの笑顔を誘ったその言葉も三浦らしかった。
タイトルを手にした三浦は次戦、3月カナダで行われる世界ジュニア選手権に挑む。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。