フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER

りくりゅう「本当にペアに出会えて良かった」演技後には“かばい合い”する瞬間も…日本ペア初の四大陸選手権優勝を叶えた“地道な努力”

posted2023/02/15 11:03

 
りくりゅう「本当にペアに出会えて良かった」演技後には“かばい合い”する瞬間も…日本ペア初の四大陸選手権優勝を叶えた“地道な努力”<Number Web> photograph by Getty Images

四大陸選手権で初優勝を果たし、笑顔を見せた三浦璃来と木原龍一

text by

田村明子

田村明子Akiko Tamura

PROFILE

photograph by

Getty Images

 フリー演技を終えた木原龍一は、崩れ落ちるように氷の上に倒れこんだ。三浦璃来も全てを出し切ったというように氷に両手をつき、二人でお互いをかばい合うしぐさを見せながらも、なかなか立ち上がることができない。

「今までのスケート人生の中で一番きつかったんじゃないですかね」

「キス&クライに這って行ったのは初めてです」

 演技後、木原はそう言って苦笑した。

過酷な地で手にした“日本ペア初のタイトル”

 USFS(アメリカフィギュアスケート協会)の本拠地、コロラドスプリングスで開催された2023年四大陸選手権。ここで三浦璃来&木原龍一は、日本のペアとして初となるISUチャンピオンシップタイトルを手にした。

 ここにはどのような目標を持って赴いたのか。そう聞くと木原はこう答えた。

「シーズン最終戦の世界選手権に向けて、レベルチェックや、しっかりやってきたことを試合で出せるのかなというのを確かめたかった。世界選手権に向けての準備段階です」

 だが実際には、準備段階以上にチャレンジングな大会となった。

 この土地の標高は1800メートル。酸素が薄く、マラソンなどの高地トレーニングにも使われる。過去にGPファイナルやスケートアメリカなど多くの国際大会が開催されてきたが、どの大会でも選手たちが後半に酸欠にあえぐ様子を目にしていた。普通に歩いていても足が重くて前に進まず、息が切れる土地である。特にペアでは、演技後に氷の上に両手をついてしばらく立ち上がれないスケーターは少なくなかった。

 そんな痛々しい選手たちの様子を目にし、以前はキス&クライに設置されていた酸素吸入器がなぜないのか、疑問の声があがっていた。だがこれは年々変わるドーピングルールなどの理由から、主催者側の意向で今年は設置されていないのだという。もちろん演技後の選手は血中酸素濃度をチェックし、一定値以下だった場合は医務室にて治療としての酸素吸入をする準備はされている、と日本チームに同行したチームドクターが説明してくれた。

【次ページ】 ミスもリカバー…木原の言葉に感じた“余裕”

1 2 3 NEXT
三浦璃来
木原龍一
メーガン・デュハメル
りくりゅう

フィギュアスケートの前後の記事

ページトップ