1発、2発、3発、立て続けにフェンス越えを打った。すさまじい飛距離だ。軽くひっかけたあたりもスタンドインする。筆者の周囲にどんどん着弾する。

　外野を守るスタッフが後ろを向いて「来る！」と言うのだが、飛球を見失うと身を縮めるしか方策がない。すぐ横に、ドスンと大きな音がして打球が落下した。大げさでも何でもなく身の危険を感じた。

　ちょうど球場の上空を米軍のオスプレイが低空飛行で横切った。カメラマンが「当たるんじゃねえか？」と言ったが、あながち冗談ではない気がした。

　いろんなキャンプ地を見て、ものすごい打撃練習は結構見てきたつもりだが、こんな盛大なホームランショーは見たことがない。村上はケージを外れている間も、ティー打撃を続けている。パワーだけでなく、スタミナもものすごいのだと実感する。

山田と村上には「特守」が課されて…

　さらに――これで終わりではないのである。今日のスケジュールには「1」と「55」は、「特守」と書いてある。

　メイングラウンドの上にあるサブグラウンドで、まず山田哲人が森岡コーチのノックを受けた。一つ一つ丁寧にゴロをさばいている。30分近くもみっちり身体を動かしていた。終わるとさすがに疲れた顔を見せた。

　山田がサブグラウンドを後にして数分後、村上が現れた。

「ムネ、大丈夫？おなかすいてない？」

　こう森岡コーチが聞くが「大丈夫っす」と至って平気な村上。

　十重二十重にファンが囲む中、特守が始まった。正面、右、左、バックハンドで捕りそこなうと「あー、惜しい！」と森岡コーチが声を上げる。ノックの球数が嵩んでも、村上の動きは変わらない。濃密なプラクティスが着々と消化されていく。

　ヤクルトのWBC選手の順調な仕上がりを見て、筆者は3月の本番が楽しみでたまらなくなった。まさに上り坂の村上宗隆は、今から3月までにさらにスケールアップし、もっとすごい選手になっているのではないか？

　それだけに怪我だけはしないでほしい。切なる思いを抱いて、球場を後にした。＜つづく＞

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