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競馬PRESSBACK NUMBER
「女の子にケガさせたらいけないと言われて…」牧場育ち→浦和の新人女性騎手が直面した壁「男性騎手が真っ裸で仁王立ちしていたことも(笑)」
text by
大恵陽子Yoko Oe
photograph byKeiji Ishikawa
posted2023/02/15 17:05
2000年に浦和競馬で騎手デビューし、2011年からは調教師へと転身した平山真希さん。騎手時代について話を聞くと…
平山 やっぱり厳しかったと思います。デビューする少し前は南関東の他の競馬場に女性騎手もいたんですけど、引退して徐々に減っていきました。応援してくれるファンがいて心強かったですけど、今のように「地元の騎手を乗せると馬主に奨励金を出します」といった制度がなかったので、調教に乗ってもレースでは他場のトップジョッキーに乗り替わりになることが多かったです。「女の子に怪我させたらいけないから」とおっしゃる馬主さんもいました。
腰に何も巻かずにレースを見ていて…
――とにかくレースに乗って経験を積みたい立場からすると「怪我なんて気にしなくていいです」と言いたくなりそうです。
平山 「大丈夫!」って思いましたけど、嫌がられる馬主さんがいたのも事実だと思います。
――デビューしてから女性の立場で他に困ったことはありましたか?
平山 男性騎手が真っ裸で通路に仁王立ちしていたことがあって、衝撃を受けました(笑)。誰かに見せているわけではなくて、男性騎手の多くはサウナに入って減量をするんですけど、水風呂から出て腰に何も巻かずにレースを見ていたんです。女性の私からも見える場所だったので、「いや~!」ってなりました。だって、私は18~19歳くらいですから(笑)。
――思春期を過ぎると、父親でも全裸を見ることは少ないのに、予期せず他人のそれを目にしてしまったんですね(苦笑)。
平山 厩舎で生まれ育った先輩は「普通じゃん」と言っていましたけど、私にとっては「せめてタオル1枚を…」という感じで、騎手会長に相談しました。暑いサウナから出てきて、気持ちいいんだろうな、とは思うんですけどね。
装蹄師を追いかけて「お願いっ!」
――デビュー後はいくつか所属厩舎を転々としました。
平山 調教師が定年で引退したり、不況のあおりで経営が立ち行かなくなって廃業してしまった調教師もいて、そのたびに次の所属厩舎を探していました。
私が調教師になるまで経験した厩舎の中には飼料会社や馬の脚に蹄鉄を打ってくれる装蹄師への支払いが滞っているところもありました。馬主さんからの預託料をそのまま支払いに充てればいいはずなのに、不思議なものですよね(苦笑)。ひどい時は装蹄師が厩舎に来てくれなくなりました。
――そんな状況も経験されたんですね。