酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「小園海斗が悲鳴を」東出コーチが笑顔でノック、栗林良吏は“WBC仕様の調整”…カープ猛練習キャンプで“ファンの喜び”を感じたワケ
posted2023/02/06 17:01
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kou Hiroo
受付で氏名を記入してパスを貰ったが、ひとつ前に放送局の名とともに「谷原章介」との名前があった。同姓同名? と思ったら、私の前を新井貴浩監督の背番号のユニフォームを着た「朝の顔」が横切った。そうか、今日は土曜日だ。さわやかな風が吹いたように感じた。
新型コロナ禍の間に、広島東洋カープの春季キャンプ地、日南市油津の駅周辺はずいぶん変わってしまった。ファンや選手が通っていた駅前の喫茶店はなくなるなど、地元の人々は寂しい思いをしてきたそうだ。
そんな中でようやく今年、一軍キャンプが天福球場に活気が戻ってきた。
土曜日だけあって、駐車場はほぼ満杯、真っ赤に身を固めたファンが結集した。他球団の春季キャンプ地よりも小規模な広島キャンプ。「広島よりも赤い」と言われた日南のファンの熱気を久々に感じた。
菊池はリーダーの風格、田中は復活を期して
内外野のノックが始まった。主力野手が揃っていて、さすがに見ごたえがある。
その中でも、やはり存在感があるのが、菊池涼介。今やチームの顔であり、リーダーだ。若い時のように派手に動くことはなくなったが、ボールが勝手にグラブに吸い付いてくるような守備を見せていた。菊池とは対照的に小柄な羽月隆太郎は打球に体ごと飛びつき、華麗なトスを披露していた。
このところ苦しいシーズンが続いていた、かつての「タナキクマル」の一人、田中広輔も黙々と打球を追いかけていた。
筆者はファームの試合を何試合か見て、矢野雅哉という若い内野手のフットワークと肩に注目していたのだが――やはりノックを追う動きは目立っている。課題である打撃を改善すれば……という思いがさらに強くなった。さらに二俣翔一は2020年に育成ドラフト1位で入った捕手だったが、昨年内野にコンバートされたうえで、支配下登録された。一線級の内野手に交じって必死で打球を追いかけていた。
カープ猛練習を象徴するアメリカンノックが
内野のシートノックは30分以上続いた。猛練習で知られる広島カープだけに、選手はノックバットによって縦横に動かされていた。これで終わりか、と思ったが、数人の内野手たちはつい先ほどまで外野手が打球を追いかけていた外野に集められた。
何が始まるのか、と思っていたら、東出輝裕コーチが、左翼へ、右翼へ打球を打ち始めた。
いわゆるアメリカンノックだ。