酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「やす、6割くらい?」奥川恭伸が復活へ一歩、「(川端)慎吾はやらんのー!」笑顔でムード◎なワケ〈ヤクルト二軍キャンプ観察〉
posted2023/02/04 11:01
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kou Hiroo
宮崎県西都市のヤクルト二軍キャンプにはここ数年、足を運んでいるが、昨年はコロナで対応できないとのことで取材はならなかった。2021年に行ったときには、報道は私のほか2、3人。ファンは近所のおじさん風がいただけだ。しかし、この鄙びた郷でのヤクルト二軍キャンプにもファンが戻ってきた。
ヤクルト二軍キャンプは室内練習場で体を動かしてから陸上競技場に出てアップをするところから始まるが――すでに室内練習場の前にはファンが集まっていた。
「どこから来たんですか?」
「宮崎」「宮崎」「高鍋」「茨城」
「え? 茨城、遠かったでしょう?」と聞くと「3年ぶりに来ました」とのことだった。なお宮崎市から来たファンも公共交通機関利用なら、1時間以上かけてきたことになる。
かつてのドラ1近藤、西浦らが盛り返しを期して
二軍の陣容は投手19人、野手14人。日差しがさす中で、入念にアップを続けていく。
二軍でキャンプスタートする選手は大きく分けて3つのグループに分けられる。1つはルーキーや2年目、経験値の浅い選手。ここから成長して一軍を目指す。2つ目は故障や成績不振などで二軍スタートになった選手。そして3つ目はじっくりと調整するベテラン選手だ。
近藤弘樹は2つ目のグループの1人だ。2017年楽天のドラ1投手だったが一昨年、楽天を戦力外になりヤクルトに入団してセットアッパーとして11ホールド、防御率0.96の好成績を挙げた。しかし翌2022年は右肩の肉離れなどで投げられず、育成契約になっていた。背番号は「012」、浮き沈みの激しい野球人生だが、ここから再起を図ることができるか。
投手は陸上競技場、野手はメイングラウンドに分かれてキャッチボールが始まる。
メイングラウンド。身体が軽そうに、回転のいいボールを投げているのは小森航大郎、山口県宇部工から一昨年、ドラフト4位で入団した俊足の内野手だ。
背番号「3」もこの中にいる。西浦直亨だ。一昨年は遊撃手として82試合に出場したが、昨年は3年目の長岡秀樹にレギュラーの座を奪われた。スロースタートとなったが、ここから盛り返す。
まだ10時を過ぎたばかりだが、気温は上がり、選手の動きもダイナミックになっていく。
18番・奥川がブルペンに入って強いボールを投げ込んだ
ブルペンの方が騒がしくなった。
報道陣がカメラを担いで足早に移動する。体育館の横に設けられたブルペンには、背番号「18」の姿があった。奥川恭伸だ。