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ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
DeNA戦力外→MLBキャンプ招待、乙坂智29歳が語る“中南米からの逆転秘話”「(41盗塁は)人生かかっているから足も速くなります(笑)」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byTomo Otosaka
posted2023/02/06 11:06
メキシコ、そしてベネズエラでも活躍した乙坂。昨季だけで41盗塁を決めたが、NPB8年間で通算19盗塁の乙坂の身に何が起きていたのか
メキシコでも26盗塁とリーグ3位の成績を残しているわけだが、はっきり言って日本にいたときの乙坂は、それなりに走力はあったが、盗塁数を稼ぐようなタイプの選手ではなかった。
「そうなんですよ。けど、人生かかっているから足も速くなりますよ。例えばナイフを持った人が追いかけてきたら、必死で走るじゃないですか」
乙坂はそう冗談を言って笑うと次のようにつづけた。
「昨年、お世話になっている関西のトレーニング施設で、立つこと、歩くこと、走ることを徹底的に見直したんです。そうしたら、これまで違うことをやっていたと気づいてしまって……今さらですが(笑)。元々スピードに乗れば走力を発揮できたんですが、それだと再現性がない。高いパフォーマンスで再現性を保とうと取り組んでいったら、心なしか風を切って走れるようになったんですよね」
活かされた日本で培われた経験
ただ、言うまでもなく走力があれば盗塁が上手く行くわけではない。日本の野球にくらべればピッチャーのクイックの稚拙さなど付け入る隙はあるが、それでも相手投手は初対戦が多く、データがあまりない状態でトライしなければいけなかった。
「相手の持っている球種は何なのかしっかりとゲームで観察して、ピッチャーの癖を研究して、あとは日本で培ってきた経験ですよね。このカウントならば次は変化球だろうって感覚を研ぎ澄ましながらプレーしていました」
またバッティングに関しては、DeNA時代から持ち味だった体の近くからスムーズにバットを出すイン・サイド・アウトのスイングで強くコンタクトし、さらにセーフティーなどの小技も含め安打を重ねていった。
アクーニャJr.に「どうやったら打てる?」と聞くと…
そしてベネズエラでは、ある人物との出会いにより“新しい感覚”を手に入れることができたという。その人物とは、かつてMLBで新人王やシルバースラッガー賞を獲得し現在ブレーブスで活躍するロナルド・アクーニャ・ジュニアだった。