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ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
メキシコで打率3割超、元DeNA乙坂智に聞いた“この1年、何があった?”「人間は変われる」「お湯が出るとすごい幸せ(笑)」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byTomo Otosaka
posted2023/02/06 11:01
メキシコのサルティーヨなどで活躍、球場に自身の写真も飾られ、一緒に写る乙坂。DeNAを戦力外となってからの激動の1年を振り返った
メキシコに旅立つ前、乙坂が成績以上に苦労するのではないかと思っていたのがコンディショニングの面だ。DeNA時代の乙坂は、怪我が少なくない選手だった。移動により睡眠時間の確保が難しく、満足にケアも受けられず栄養のある食事もできない状況で、過酷なリーグ戦をどのようにして乗り切ったのだろうか。
「毎日できるだけ同じ状態を保つことを心掛けました。野球は止まった状態からダッシュなど緩急をつけた動きが多いので、怪我防止のためなるべく体に緊張を残さないように毎晩ホテルに帰って体操をやっていました。あと月の満ち欠けで体の緊張する場所が変わってくるので月のリズムに合わせた呼吸法をやったり、体を冷やすのはいけないので移動のバスのなかではダウンジャケットを着こんだり」
自分がやれることをやるしかない。
試合前とかは足が震えたりするんですよ。怖くて。
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「まあ人間って覚悟を決めたら、たいがいのことはいけますよ」
乙坂は、こともなげにそう言うのだ。
「でもね、試合前とかは足が震えたりするんですよ。怖くて。だから試合で2安打ぐらいすると、ああ、また明日も野球ができるって」
今日を生き、結果を出し、明日を掴む。しかし誰にも自分の未来のことはわからない。
トレード通告を受けた翌日、朝3時には空港にいた
リードオフマンとして地位を固めつつあったブラボスにあって、6月13日、乙坂は突然球団から同リーグのサラペロス・デ・サルティーヨへのトレードを言い渡される。この日は休日で、チーム関係者全員で近郊の牧場に旅行に行っているときだった。仲間との笑いが絶えない時間だったが、リラックスしていたマインドは一気に複雑に渦巻いた。