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ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
メキシコで打率3割超、元DeNA乙坂智に聞いた“この1年、何があった?”「人間は変われる」「お湯が出るとすごい幸せ(笑)」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byTomo Otosaka
posted2023/02/06 11:01
メキシコのサルティーヨなどで活躍、球場に自身の写真も飾られ、一緒に写る乙坂。DeNAを戦力外となってからの激動の1年を振り返った
1番センターとして出場したデビュー3連戦。乙坂はがむしゃらに気を吐いた。
「人生を変える3連戦だと思ってむちゃくちゃ集中しましたね。結局14打数5安打ぐらいで決して大爆発とは言えませんでしたが、盗塁も2つ決めることができある程度結果を出すことができたんです」
戦力と認められなければ即リリースも考えられる環境で、乙坂は延命した。一方で乙坂が加入したことで、チームを去らなければいけない外国人選手もいる。その選手が肩を落としロッカーを片付けている背中を見て、乙坂は「明日は我が身」と気持ちが引き締まる思いだった。
ベッドで寝られるって本当に幸せだな
メキシコではとにかく遠征が大変だった。バスで6時間移動は当たり前。10時間に及ぶこともざらだった。また飛行機による移動もメキシコは国内便のチェックインが2時間前のため、出発が早朝ならば暗いうちに空港に集合しなければならない。
「一週間ほぼ車中泊みたいなこともありましたし、ベッドで寝られるって本当に幸せだなって思ったんですよ」
そう苦笑しながら乙坂は言う。
「日本で移動は新幹線とかだったんで、最初メキシコは正直しんどいとは思いましたけど、そんなときに心の支えになったのがチームメイトなんです。ブラボスは若い選手が多くて、めちゃくちゃ明るいんですよ。こんな状況で元気に野球に向き合っている仲間を見ると、きついなんて思うことはできなかった」
ブラボスの施設は、お世辞にも恵まれた環境とはいえなかった。スタジアムは老朽化し、掘っ立て小屋のようなロッカーに30人の選手が詰め込まれていた。またトレーナー室にはベッドがひとつしかなく、必要とおぼしきマッサージを受けることもできない。
乙坂はどうコンディションを整えた?
「シャワーなんかもお湯が出るのが3日に1回ぐらいなんで、お湯が出るとすごい幸せだなって(笑)。食事も基本はハンバーガーやサンドウィッチ、タコス、それにコーラですしね。まあ日本では当たり前のことが、海外では当たり前ではないことを改めて感じました」