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ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
メキシコで打率3割超、元DeNA乙坂智に聞いた“この1年、何があった?”「人間は変われる」「お湯が出るとすごい幸せ(笑)」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byTomo Otosaka
posted2023/02/06 11:01
メキシコのサルティーヨなどで活躍、球場に自身の写真も飾られ、一緒に写る乙坂。DeNAを戦力外となってからの激動の1年を振り返った
メキシコのチームは出入りが激しい。外国人選手の枠は7人。成績不振はもちろん、チームのニーズに合わない選手は次々と放出される。乙坂が後から聞いた話によれば、ディアブロスでは昨シーズン、30人以上の外国人選手が入れ替わったという。
厳しい現実に直面した乙坂。開幕直前ということもあり、他のチームのロースターはほぼ確定している。球団からはベネズエラのサマーリーグへの参加を勧められたが、今年はメキシコでやると決めていた乙坂はこれを固辞した。しかし新たな移籍先のあてなどはなく、不安を胸にかかえたまま、メキシコの澄み切った青空を見上げるしかなかった。
2017年にメキシコに行った時の縁が乙坂を救う
だがその2日後に吉報が舞い込む。乙坂がリリースをされたことを知り、同リーグのブラボス・デ・レオンが練習生として声を掛けてくれたのだ。
「じつは2017年にメキシコのウィンターリーグでヤキス・デ・オブレゴンというチームでプレーをしたんですが、当時のチームメイトがブラボスの監督をやっていて『絶対に獲れ!』と言ってくれたようなんです」
2017年に乙坂はオブレゴンで27試合に出場し打率.410、12打点、出塁率.487、OPS.967と大活躍しており、かつての実績がピンチに陥っていた自身を救ってくれた。
練習生としてチームに帯同された乙坂は黙々とトレーニングに励んだ。チームメイトにはオープンに話しかけコミュニケーションに努めた。精一杯、真摯に野球に取り組む姿勢が印象に残ったのだろう。すると地元開幕戦を終えた次戦の遠征に一緒に来いと首脳陣から告げられた。予期もせぬ状況で出場機会を失うことのあるメキシコであるが、また突如としてチャンスが到来するのもこの土地ならではだ。
人生を変える3連戦だと思ってむちゃくちゃ集中しました
夜行バスで6時間半移動し、遠征先へ到着すると乙坂は眠い目をこすりながら契約書にサインをし、ロースター入りを果たした。だが安閑とすることはなく、より危機感はつのった。