欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
英国紙が絶賛「ミトマは真のスターになれる」「ミトマはベルカンプのようだ」現地記者が思い出す“6カ月前、完全無名だった三笘薫25歳”
text by
田嶋コウスケKosuke Tajima
photograph byAFLO
posted2023/02/01 17:24
三笘薫(25歳)が止まらない。今度はFAカップ・リバプール戦、後半アディショナルタイムに決勝点となるスーパーゴール。現地紙でもミトマへの絶賛が相次ぐ
「三笘はピッチ上で最高の選手だった。対峙したトレント・アレクサンダー=アーノルドの能力に疑問を抱かせた。三笘の素晴らしい決勝ゴールは、98年W杯フランス大会の準々決勝アルゼンチン戦で、オランダ代表FWデニス・ベルカンプが決めた得点に似ていた。ゴールは三笘のパフォーマンスを要約していたし、彼がどんな選手であるか凝縮されていた」
ベルカンプの場合は、背後からのロングボールを綺麗にトラップし、3度のボールタッチから優雅に決めた。「W杯史上、最も美しいゴールのひとつ」と謳われるオランダ代表レジェンドのゴールとは少しタイプが異なるが、英紙の指摘としてそのような称賛の声が上がった。
さらに1785年創刊の世界最古の日刊紙である英紙タイムズで、サッカー部門の主筆を務めるヘンリー・ウインター記者は「三笘が見せた魔法の瞬間が、リバプールとクロップの苦悩をさらに深めた」と見出しを打ち、次のように記した。
「三笘は筑波大学でドリブルの研究をしていたが、この試合で見せたスリータッチ・トリックは、プレーへの洞察力が深い選手であることの証だ。今回は、さらにアクロバティックで独創的だった。キックフェイントでかわしたジョー・ゴメスは優れたDFであるため、このゴールはさらに評価に値する」
地元ニュースサイトのサセックス・ワールド、そして同ニュースサイトのサセックス・ライブも、三笘にチーム単独最高点となる9点の高評価。同じく9点の最高評価をつけた英紙デーリー・メールは次のように伝えた。
「三笘は、ブライトンのスカウティングチームにおいて最新版の掘り出し物。見事なバランス、並外れたハードワーク、完璧な技術を備えている。ブライトンはハゲタカ(=強豪クラブからのオファー)を寄せ付けないようにしなければならない」
英メディアでも、その扱いはやはり主役級だ。
イングランド代表DFに“再び”完勝
2週間前の国内リーグ戦でブライトンに0−3の惨敗を喫したリバプールは、今回の対戦にあたり少しばかりアプローチを変えてきた。顕著な違いはサイドバックの攻撃参加。右SBアレクサンダー=アーノルド、左SBアンドリュー・ロバートソンとも攻撃に参加する回数を極端に減らし、最終ラインに留まった。SBの攻撃参加はリバプールの持ち味だが、4人のDFが最終ラインに残ることで、ボールポゼッションに長けるブライトンにスペースを与えないようにした。
ところが、三笘はマッチアップしたアレクサンダー=アーノルドを翻弄した。
立ち上がりの前半4分には、三笘がイングランド代表DFの股を抜いて突破。後半10分には三笘が静止した状態から急発進し、アレクサンダー=アーノルドを置いてきぼりにしてラストパスを出した。
「(アレクサンダー=アーノルドが自分への対応を)どう変えてくるかなと見ながらやっていたんですけど、あまり変えてきてないかなって感じだったので。行けるとこは行ってと考えてました」と三笘が語ったように、前回と同様に今回のマッチアップも日本代表が圧勝した。
そして、もともと守備をあまり得意としていないイングランド代表の右SBは、後半14分の早い時間帯に交代を命じられたのだった。
「いや、褒めてくれないですよ(苦笑)」
三笘との質疑応答で、取材エリアが笑いに包まれた瞬間があった。「試合後、ロベルト・デゼルビ監督からお褒めの言葉はありましたか?」。そんな質問が飛ぶと、三笘は表情を緩めた。