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[守護神が語る]権田修一「ベストセーブの深層」
posted2023/01/27 09:00
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph by
Kiichi Matsumoto
ゴールマウスに君臨し、ベスト16の立役者となった男が「ベスト」と評するプレーがある。スペイン戦の最終盤で見せたセーブ。それは派手さはなくとも、彼が積み重ねてきたゴールキーパーとしての技術と、グループステージでの経験が見事に結実したものだった。
『CM明け5秒前、4、3、2……』
スタジオのカメラに赤ランプが灯る。
『今日のスペシャルゲストは、サッカー日本代表・権田修一選手です!』
司会のアナウンサーに紹介され、権田が画面に映し出される。ピッチ上での険しい顔とはまったく違う。柔らかな表情で、時に軽妙なジョークも交えながら森保ジャパン秘話を披露し、スタジオを沸かせる。
予言は、本当だった。クロアチアとの死闘に敗れ、カタールを去ることが決まった翌日の取材エリアで、守護神は断言した。
「明日から、たくさんテレビに出ます」
カタールW杯で火が付いたサッカー人気を絶やさないために。GKというポジションの奥深さを伝えるために。帰国からの数週間、とにかくテレビに出演しまくった。
そこで、気が付いたことがある。
「テレビの生放送で、もし何も話せなかったら放送事故になります。W杯前の僕だったら、きっとめちゃくちゃ緊張していたはず。でも今は、まったく緊張しないんです。だって、W杯という4年に一度の“究極の生放送”を経験したから。台本もない、自分がミスをすれば4年間の努力がすべて無駄になる。そんな舞台を経験したことで、サッカー以外の仕事に関わる場合でも精神的に変わるんだなって、痛感しましたね」