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「PKは運じゃない」世界一を決めた豪快PKに再び脚光…なでしこ熊谷紗希は森保Jをどう見た? 女子W杯まで半年「4強まで行かないと…」
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byL:Kiichi Matsumoto/JMPA R:AFLO
posted2023/01/13 17:01
カタールW杯の後、2011年女子W杯決勝のPK戦がSNSで再び話題に。熊谷は決まれば世界一というプレッシャーの中、ゴール左上へ豪快に蹴り込んだ
来るべき自分たちのワールドカップで再びあのムーブメントを起こすために、課されるハードルは決して低くないと熊谷は見ている。
「ベスト4、準決勝まで行って初めて、少しは試合も観てもらえるようになるんじゃないですかね」
しかし、2022年11月の欧州遠征ではイングランドに0対4、スペインに0対1と苦杯をなめた。本大会まであと半年余りという状況で、着手すべき課題は多い。
「イングランド戦、相手はプレッシャーを何も感じていないんじゃないかというくらい、私たちはコンタクトすらさせてもらえなかった。でも1対1で勝ちきれなくても、少しは相手の体勢をブラしたり、もう少し足掻かないと。あとはボールスピードも全然違う。ただ、代表のユニフォームを着て試合をして毎回、世界の凄さに驚いている場合じゃない。この相手に勝っていかなきゃいけないんだと。これが日常にならないと」
代表活動期間中のトレーニングでは、誰よりも世界基準を知る熊谷が声を張り上げる姿がよく見られる。ゲーム形式の練習となれば際どいスライディングも容赦なく見舞う。少なくとも1回の代表活動で過ごす数日間の中には、世界で戦うためのスタンダードを持ち込んでいるつもりだ。
気がつけばなでしこジャパンで最年長の立場となったいま、彼女自身が果たすべき役割も多い。「どれだけ伝わっているかはわからないけれど」と、その立場ゆえに歯痒さは絶えない。
強豪バイエルンでの厳しい競争
熊谷自身も所属クラブで順風満帆な日々を送っている訳ではない。監督が替わり新たなチームとして戦う2022-2023シーズンは、リーグ前半戦の10試合を終えて先発出場は6試合にとどまっている。男子同様、ハイスピードで試合が進む第一線で求められる能力と自身の強みとの狭間で、生き残りをかけて日々戦っている。
「女子においても、最終ラインの選手も相当なスピードが求められる時代。自分のプレーに自信はあるけど、ただ自分も今の時代に適応していかないと、今のチームでの序列は覆せない。でもいきなり足が速くもならないわけで、中盤でも戦える自負はあるけれど、使ってもらう難しさを色々と感じています」
それでもなでしこジャパン同様、自分自身と向き合うことでしか道は開けてこないことを熊谷は知っている。