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「PKは運じゃない」世界一を決めた豪快PKに再び脚光…なでしこ熊谷紗希は森保Jをどう見た? 女子W杯まで半年「4強まで行かないと…」
posted2023/01/13 17:01
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
L:Kiichi Matsumoto/JMPA R:AFLO
図らずも再注目を浴びた自身のペナルティキックを「あれは全然状況が違うから」と、熊谷紗希(32歳)は意に介さない。FIFAワールドカップカタール2022のラウンド16で、日本代表がクロアチアに敗れたあとのことだ。
「ソーシャルメディアで2011年のPKが少し話題になっていたのは目にしました。でもあのときの私は外しても大丈夫だという余裕があったから。仮に外してもまだ日本には2回チャンスがある状況だった。ただ置きにいって外すのだけは嫌だなと思ったから、外すんなら思いっきり外そうと。そうしたらあのキックになって。まあ、あれは取れないよね」
思い出しながら、話す顔には思わず笑いがこぼれる。
さかのぼること12年前、ドイツでのFIFA女子ワールドカップ決勝に臨んだなでしこジャパンはアメリカを相手に驚異的な粘りを見せ、勝負はPK戦にもつれ込んだ。GK海堀あゆみのセーブもあり、2対1とリードして迎えた4人目のキッカーとして登場した熊谷は、強烈なシュートをゴール左上に突き刺し優勝を決めるキッカーとなった。
この肝っ玉シュートがクロアチア戦後、にわかに注目を集めたのだ。「そうは言っても、私も(昨年の)2月のアジアカップで外してるから」と苦笑いするが、だからこそ続く言葉には重みがあった。
「でも100%、PKは運じゃない」
クロアチアGKに蹴らされていた?
クロアチアとのPK戦を見て熊谷は、日本の選手たちが相手GKリバコビッチのタイミングで蹴らされていたと感じたという。わずか11m先のゴールに蹴り込むだけでも、成否を分ける駆け引きがそこには存在するのだ。
テレビ越しに見ていた熊谷はGKの間合いを感じ取っていたというが、同時にそれが、熱狂がたぎるスタジアムでプレッシャーにさらされれば感覚が鈍ることも知っている。そしてその感覚を練習で培うことは、容易ではない。
「あの雰囲気、あの状況、あの疲労度でやるからこそ、結果はやっぱり実力で分かれるんだと思うんです。でもあれと同じ環境は練習では作れない。だから運じゃないけど、練習したからって絶対に決められるものでもない。PKって簡単じゃないんですよ。メッシでも止められちゃうんだから」