酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
年俸4.25億円ダウンの田中将大…日本復帰の2年間は“不運な無援護”なだけで「一線級の先発」だった? 23年の逆襲に期待したいワケ
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2023/01/11 11:01
21年、22年と勝ち星に恵まれなかった印象が残る田中将大。日本復帰3年目にどんな成績を残すか
端的に言えば、ここ2年、田中将大はアウトをとってもとっても勝ち星を手にできない日々を過ごしていた。
子細に見れば田中が先発登板した試合では味方打線の援護が非常に少なかったことが分かる。
“好投しているのに援護がない”のが分かる指標とは
ここ2年で300回以上投げた10投手のQS(クオリティスタート/先発投手にとって最低の責任とされる6回以上投げて自責点3以下)、HQS(ハイクオリティスタート/勝利と同様の価値があるとされる7回以上投げて自責点2以下)数と、その投球の際の勝利数との関係を見てみよう。
山本由伸(オ) 45QS(32勝71.1%)40HQS(29勝72.5%)
高橋光成(西) 38QS(21勝55.3%)27HQS(14勝51.9%)
森下暢仁(広) 36QS(15勝41.7%)24HQS(11勝45.8%)
柳裕也 (中) 34QS(18勝52.9%)22HQS(15勝68.2%)
戸郷翔征(巨) 33QS(19勝57.6%)20HQS(12勝60.0%)
青柳晃洋(神) 36QS(25勝69.4%)21HQS(17勝81.0%)
田中将大(楽) 32QS(12勝37.5%)22HQS(9勝40.9%)
上沢直之(日) 35QS(20勝57.1%)24HQS(15勝62.5%)
伊藤大海(日) 33QS(18勝54.5%)17HQS(12勝70.6%)
大野雄大(中) 31QS(12勝38.7%)23HQS(11勝47.8%)
山本はここ2年最多の45QS、40HQSと圧倒的な数字。その上QS、HQSともに勝率は7割を超している。山本も抜群の好投をしているが、打線もしっかり援護している。
それ以外の投手もほとんどがQS以上を記録すれば5割を超しているが、広島の森下と中日の大野、そして田中は5割に届かない。とりわけ田中は32QSを記録しながら勝ち星は37.5%の12勝、22HQSを記録しながらも40.9%の9勝にとどまっている。
山本由伸を別格として、田中将大は安定感では今のNPBを代表する先発投手と全く遜色がない。しかし、田中が投げるときには味方の援護がほとんどなかったのだ。
全盛期に比べて…の部分はあるとはいえ
とりわけ極端な結果になったのが2021年だった。
23試合4勝9敗155.2回 自責点52/援護点40 防御率3.01/援護率2.32
QS17、HQS11
自責点1以下 9試合3勝2敗4勝敗つかず
自責点2 4試合0勝1敗3勝敗つかず
自責点3 5試合0勝3敗2勝敗つかず
自責点4以上 5試合1勝3敗1勝敗つかず
防御率よりも援護率が低くては勝ち星が上がるはずがない。シーズン150イニング以上投げて4勝は1997年のダイエーホークス、武田一浩(4勝9敗163.2回)以来の珍記録だった。
確かに、田中は全盛期に比べると見劣りする部分はいくつかある。