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大谷翔平の遠慮なし“ツンデレ発言”→ピリピリ空気が一変…WBC会見後、舞台袖の会話に見た栗山監督との“リアルな師弟関係”
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byNanae Suzuki
posted2023/01/07 17:01
一段とパワーアップした体躯に、記者の間から思わず「デカい……」の呟きが漏れた
“ツンデレ発言”に漂う信頼感
日本が初代王者となった2006年の第1回大会の頃は11歳だった大谷が当時の思い出を明かすと、その一言一言に大きく首を頷かせ、息子を見つめる父親のように目を細めた。
「栗山監督の選手愛を感じたことのあるシーン」について聞かれた大谷がニヤリと笑い、「あんまり感じたことはないです」と答えると、左手で頭を抱えて体をのけぞらせながら大爆笑。「一人一人の選手と会話する監督だと思うので、あまり一緒にプレーしたことない選手も数日でお互いを知ることができると思いますし、集まる選手は何の不安もなくプレーできるんじゃないかな」と続けた愛弟子の“ツンデレ”ぶりに、指揮官の目尻は下がりっぱなしだ。
さらに、「出場を決めるにあたり栗山監督の存在は大きかったか?」と聞かれた大谷が「そうですね……本人を目の前に本当に申し訳ないんですけど」と悪戯っぽく切り出すと、栗山監督は思わず首を垂れて苦笑い。「おそらく誰が監督でも出たいなと、気持ちは前向きだったと思う」と口にしたのち、「ただ、自分のことを知ってくれている監督が指揮をとってくれるのは、選手にとっては大きいこと。決断する容易さは栗山監督であったからこそ、というのはあるんじゃないかな」と再び“ツンデレ”を繰り出すと師匠はひとたまりもなく、嬉しそうに目を瞬かせるばかりだった。
大谷と栗山監督。2012年のドラフト指名時から続く師弟関係には、特別な絆がある。
その才能を信じ、時に周囲から批判を浴びながらも起用してきた指揮官はまさに二刀流の生みの親。前人未到の道を切り開く日々には、綿密なコミュニケーションと二人三脚の試行錯誤があった。メジャー挑戦後、名実ともに世界一の選手となった大谷がWBC出場を決めた背景に栗山監督の存在があったことは疑いようもないが、それを安易なエピソードとして披露しないのも大谷らしいところ。指揮官の頬を緩ませた“ツンデレ”は、誰より心を許している証だろう。