酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
〈あのドラフト目玉は今〉「今みたいにSNSがあったら、誹謗中傷の嵐では」一場靖弘40歳が語る“一場事件”の痛み「球場でヤジられると…」
posted2023/01/07 11:01
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
JIJI PRESS
東京インディペンデンツについては当コラムで2020年、その立ち上げの時期に紹介した。どの中学野球団体にも属さない中学の野球チームであり、子供たちが「高校以後のステップで、野球で活躍する」ことを目的として選手を育成している。また子供に「シーズン当たりの打席数、投球回数」を保証しているユニークなチームだ。
この東京インディペンデンツで、現在におけるドラフト1位にあたる「自由獲得枠」投手が指導を始めている。夕暮れ迫る川崎市の室内練習場で、一場靖弘氏に話を聞いた。(以下敬称略)
2年時に夏の甲子園優勝を経験した
一場靖弘は1982年生まれ。2022年に40歳になったが、体をしなやかに動かして中学生たちに「マウンドでの下半身の使い方」を指導している。
「僕はまだ体を使うことができるので、技術的なことは、なるべく口で言うのではなく、まず見せてあげて、子供たちにイメージをつけてからやってもらいます。そのほうが、理解してくれると思うので」
一場は群馬県中西部の東吾妻町出身。小学生時代に野球を始めた。
「親父が野球好きで、たまたま庭が広かったので、キャッチボールをして。僕は正直、面白くはなかったけど、“野球チーム入ったらどう?”と言われて軟式チームに入りました。中学も部活の軟式野球です」
そこから桐生第一高校に入る。1学年先輩には、このコラムで2022年に紹介した正田樹がいた。41歳の正田は先ごろ、現役続行を発表した。
「(正田先輩に)いつ辞めるんですか? って聞いたことがあります(笑)。野球がそれだけ好きなんでしょう。元気ですし。正田さんの代では夏の甲子園で優勝しましたが、僕のときは甲子園の初戦で敗退しました」
大学時代に最速154km、ドラフトの目玉に
しかし本格派右腕の一場は早くから注目され、明治大学に入学する。
「形だけセレクションを受けましたが、入学はその前からだいたい決まっていたようです」
一場は東京六大学屈指の投手として大活躍する。4年春には当時の六大学記録である154km/hをマーク。チームを完全優勝に導き、107奪三振でリーグ2位となる記録も樹立した。大学通算では52登板26勝15敗、防御率2.00。通算奪三振379は東京六大学史上5位である。
「体も気持ちも脂が乗っていた感じです」
一場は大学時代について、こう続ける。