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中邑真輔と引退直前のグレート・ムタが元日に描いた“奇跡のアート”とは?「こんなものを見せられたら…」一夜かぎりの邂逅に抱いた感慨
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2023/01/05 17:01
プロレスリング・ノアの元日興行で実現した「奇跡の一戦」。毒霧で顔面を赤く染めた中邑真輔のコスチュームを引き裂くグレート・ムタ
「バイバイ、マイ・アイドル」
もうすぐ消えていくムタという存在ではあるが、やはりその存在感は格別だ。中邑はこう語っている。
「あんなにでかかった壁が、なんら色褪せることなく、まだまだでかい壁でいてくれて、武藤敬司、いや、グレート・ムタとリング上で、最後に肌を合わせられたことが、この上ない喜びと感激です」
ムタは1989年4月にアメリカで誕生したキャラクターだが、筆者が初めて見たのは、彼が日本初上陸を果たした1990年9月だった。大阪のサムライ・シロー(越中詩郎)戦では、こんなものかと思ったが、2戦目となった広島での馳浩戦のインパクトはすごかった。
だから、「武藤が引退する」という話を最初に聞いた時、武藤は引退しても、ムタは引退しないだろうと思った。それなのに、ムタの方が1カ月早く引退するというから、驚きだった。
ムタはこの1月22日に横浜アリーナで引退するが、試合としては、この中邑戦が事実上の引退試合だろう。当日にスケジュールされている6人タッグマッチでは、この衝撃を超えることはできないと思うからだ。とはいえ、儀式だけは見届けよう。
「大好きだったんですよ、ガキの頃。武藤敬司は60で引退しますが、それに比べりゃボクはまだ鼻たれ小僧ですから。まだ世界で戦っていきたいと思います」
掟破りの“毒霧返し”を披露し、最後はキンシャサで憧れの存在から3カウントを奪った中邑は、万感の思いをマイクに込めた。
「バイバイ、マイ・アイドル」
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