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2年目の大逆襲はあるか “BIGBOSS語録”で読み解く新庄監督の変化と勝算「優勝なんか一切、目指しません」→「日本一だけを目指して」のナゼ
text by
中田愛沙美(道新スポーツ)Asami Nakata
photograph byNanae Suzuki
posted2023/01/05 11:00
BIGBOSSから新庄監督へ――。新本拠地元年を鮮烈なシーズンにすることができるか
遅咲きのリーディングヒッター誕生に沸いた一方、チームはペナントレースで厳しい戦いを強いられた。開幕5連敗に始まり、一度も浮上しないまま2013年以来、9年ぶりの最下位に沈んだ。
BIGBOSSこと新庄監督の発言とともに、就任1年目のシーズンを振り返ってみる。
「優勝なんか一切、目指しません。僕は!」
一昨年11月の監督就任会見で力強く宣言し、大きな話題を呼んだ。求めるのは目先の一勝より選手の成長。借金が膨れあがっても、その姿勢は変わらなかった。僅差で敗れた試合は「負けはしたけど、楽しいゲームをみんなに見せられたのはうれしい」と白い歯をのぞかせた。チーム作りについて「投手3人、野手4人のタレントを作り上げていけば、楽しいチームになる」と持論を展開。松本剛とともに「タレントの1人になった」と認められたのは、左のエース加藤貴之だった。シーズン最少11与四球で72年ぶりに日本記録を更新し、昨シーズン最終盤に今季の開幕投手に指名した。
「全選手、1回は一軍のグラウンドに立たせる」
全選手を「横一線」で競争させることを公言。「1年間のトライアウト」と銘打ち、選手の能力を見極めてきた。春季キャンプ中に行われた初の対外試合では、内外野の守備位置をシャッフル。事前に知らされていなかった選手たちから驚きの声があがった。狙いを「常に緊張感を持たすため」と説明し、シーズン中も本職ではないポジションで選手を起用し、新たな可能性を探った。ソフトバンクとの開幕戦の先発にはドラフト8位ルーキーの北山亘基を抜擢。一、二軍の入れ替えを活発に行い、右肘故障でリハビリ中だったガントを除き、支配下登録選手全員を一軍で起用した。
「僕がプロ野球を変えていきたい」
就任時から「監督とは言わないで。BIGBOSSと呼んで」とお願いし、シーズン開幕の前日には登録名をBIGBOSSに変更した。2月の春季キャンプではプロ野球界の話題を独占した。グラブ約40個を使ってリメークしたというロングコートを着て沖縄入りしたかと思えば、ド派手な3輪バイクにまたがってキャンプイン。「野球選手じゃない本当のスペシャリストから学ぶことで考え方が変わってくる」と、さまざまな分野の専門家による臨時コーチを招聘した。幅広い人脈を駆使して、タレントで陸上十種競技元日本王者の武井壮、アテネ五輪男子ハンマー投げ金メダリストの室伏広治スポーツ庁長官らがキャンプ地を訪れた。