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中学で198cm「こんな伸びるんや」石川祐希、高橋藍の恩師も驚く“207cmのミドルブロッカー”の成長記録〈春高バレー注目の18歳〉
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYuko Tanaka
posted2023/01/05 06:00
22年春に日本代表合宿にも参加した東山高校・麻野堅斗(18歳)。最高到達点は342センチ
バレーボール経験者の両親と、兄姉の影響で迷うことなくバレーボールを始めた。もともと小さい頃から身体を動かすことが好きで、本人曰く「教室でもいつもしゃべっていた」という活発な少年時代を過ごした。
恵まれた体格や、中学時代に全国優勝したキャリアもある。聞かれるたびに「将来は日本代表選手になりたい」と答えてきたが、漠然とではなく本格的に自身の将来を考え始めたのは高校に入ってから。元Vリーガー、日本代表選手で、中央大時代には石川祐希を、東山高では高橋藍を指導した松永監督との出会いが、麻野にとって大きな転機になった。
「それだけじゃ通用しない」Bクイックの習得
「そもそも左利きなので、CクイックとDクイック、ライトに開くスパイクを打つ、という意識しかなかったんですけど、理生さんから『それだけじゃこの先は通用しない』と言われて。できないことや、やったことがないことにチャレンジするのが苦手だったんですけど、やってみたら面白いな、と感じて積極的に取り組めるようになりました」
その1つがBクイックだ。
Bクイック、Dクイックはどちらもセッターからやや離れた位置に上がる速いトスを打つ攻撃で、セッターの後方から仕掛けるDクイックは左利きの選手が得意とする事が多い。反対にBクイックはセッターの前、ネットを正面にしてセッターの左側から仕掛ける攻撃のため、利き手と近い位置で打てるDクイックとは異なり、Bクイックの場合は顔の前を通過させたボールを打たなければならない。同じ速いトスを打つ攻撃とはいえ、「どこでボールをとらえるか」「目線はどこで切るのか」と不慣れとする左利きの選手も少なくない。
そんな中、麻野はラリー中もセッターの後ろから打ったかと思えば素早く移動して前に入ってBクイックを打つシーンが多い。
左利きの例にもれず、もともとは麻野もBクイックは苦手どころかほとんど打ったことがなかった。むしろ攻撃だけに留まらず、プレー全体のスピードアップが課題だった。
そもそもバレーボール以外の競技経験がなく、動き自体が硬い。ただ、相手ブロックの上から難なく打つことができたため、これまでは課題よりも「大きさ」ばかりに着目されてきた。確かに中学や高校で日本一になることだけが目的ならばそれでもいい。しかし、高校卒業直後から日本代表にも選出された石川や高橋を指導してきた松永監督は、「できないことをやれば武器になる」とチャレンジさせ続けた。
ラリー中に繰り出す新たな武器となったBクイックはまさにその賜物でもあるのだが、松永監督が求めるのは1つの攻撃に留まらない。麻野の将来を見据え、明確なプランを描いていた。