バレーボールPRESSBACK NUMBER
〈春高バレー〉2年連続で決勝フルセット負け…それでも「本当に楽しかった」“鎮西の3番”舛本颯真が「THEエース」と呼ばれる理由
posted2023/01/09 11:03
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Naoki Morita/AFLO SPORT
昨年の悪夢を払拭すべく、熊本・鎮西高の3番を背負うエースの舛本颯真(ますもと・そうま/3年)が決勝のコートに立つ。
フルセットの連戦続きで、右膝にはケガを負う。満身創痍という言葉ですら足りないぐらい身体は限界を超えていたが、何が何でも勝利をつかみ取る。その一心だった。
春高バレー決勝。駿台学園高(東京)から2セットを先取し、全国制覇まであと1セット。舛本が声を張り上げる。
「去年はここで負けているから、目の前の1本だけに集中していこう」
渾身の力でスパイクを放ち続けるだけでなく、ボールをつなぐべく駆け回る。1点、また1点と得点が加わり、3枚ブロックにもひるまず攻める舛本が決めるたび、会場から大きな拍手と抑えきれない歓声が沸き起こった。
第3セットも14対10とリードを広げ、いよいよ悲願達成の時が訪れるか――。
しかし、高まる期待を嘲笑するかのように、勝利の女神はまた、優しく微笑んではくれなかった。それどころか残酷なほどに、1年前と同じ試練を与えた。
競り合った末に3セット目を落とし、そこから逆転によるフルセット負け。つかみかけた勝利が手のひらから零れ落ちる。嫌でも昨年の苦い記憶が蘇る中、違っていたのは、去年は同じ状況で泣き崩れた舛本が、涙を流すことなく、ただ前を見据えていたこと。
「『自分に(トスを)持って来い』と呼べば、持ってきてくれた。最後に決めることはできなかったですけど、このチームメイトとやってきてよかったし、5セット目は本当に楽しかった。やりきったので、悔いはないです」
「“THEエース”。あれこそが本当のエース」
182センチのアウトサイドヒッター。決して身長が高いわけではなく、圧倒的な跳躍力があるわけではない。昨年に続いて決勝進出を果たすも、今大会も悲願の制覇を成し遂げられなかった。だが間違いなく、主役は舛本だった。
昨夏のインターハイに続き、春高決勝でも対峙した駿台学園の梅川大介監督はこう称する。
「舛本選手は“THEエース”。あれこそが本当のエースと呼ぶべき選手です。攻撃に関してはエースが打ち抜く、いわば古典的なスタイルと思われるかもしれませんが、それをあれだけ貫き通せるエースは鎮西以外からはなかなか生まれてこない。そういう選手をつくる畑野(久雄)先生、周りのチームメイト。それこそがまさに鎮西の凄さです」