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3度目の堀口恭司戦へ…扇久保博正35歳が語った“覚悟と勝算”「思い切り殴ってくるから、たぶん初詣には行けないだろうな」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2022/12/29 17:03
2018年7月、扇久保博正(左)は『RIZIN.11』で堀口恭司に判定負け。修斗時代にも一本負けを喫しており、大晦日の『RIZIN.40』で3度目の正直に挑む
だが、堀口戦のショックは癒えていなかった。扇久保は当時の心境を「怖かった」と振り返る。
「俺、大丈夫かな?」
果たして1回戦では3Rにスタミナが切れ、グラウンドで上をとられ殴られる攻防を余儀なくされた。
「こっちは酸欠なのに、相手は必死になって殴ってくるわけじゃないですか。殴られながら、『こんな辛いことはもうやりたくない』と思ってしまった」
結局、扇久保は判定でなんとか準決勝に進出することができたが、試合後、自分自身に対して疑念を抱いた。
「俺に格闘技をやる資格はあるのか?」
続けて、こんな言葉も頭をもたげた。
「自分ではリスタートを切ったつもりだったけど、結局メンタルは堀口戦のままだったんじゃないか」
しかし、4カ月後に行われたカナ・ハヤットとの準決勝で扇久保の心配は杞憂に終わる。試合開始からわずか1分20秒、ハヤットをチョークで仕留めることができたのだ。
「当時のハヤットは“北米最強幻想”を身にまとっているような選手だった。そういう選手を秒殺できたことで自信を取り戻せました」
3度目の堀口戦へ「初詣には行けないだろうな」
フライ級への転向、敗北やケガを克服しての再起戦……。8年前のVTJフライ級トーナメントのシチュエーションは、今回の堀口戦と酷似しているといえないだろうか。
試合前の勝敗予想が堀口に大きく傾いていることは扇久保も理解している。
「いまの時代、Twitterに『扇久保が勝つなんて絶対無理』と書き込む奴もいますからね。余計なお世話ですよ。まだやってもいないのに」
筆者がカタールW杯の日本対ドイツを例に「勝負に絶対はない」と説くと、扇久保は意外な反応を示した。
「(堀口に負けた)2013年や2018年の僕と、いまの僕は違う。明らかにいまの方が強くなっている。日本がドイツに勝ったことは奇跡といわれているけど、僕が堀口選手に勝っても奇跡ではない。対等にやって、普通に勝ちますから」
では、三度目の正直を果たし、家族とともに笑顔で初詣に行ける?
「アイツ、思い切り殴ってくるから、たぶん初詣には行けないだろうな。ボロボロになることは覚悟しています」
そう語ると、扇久保は笑顔とともにキャリアの年輪を感じさせる深い皺を浮かび上がらせた。やってみなければわからない。
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