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3度目の堀口恭司戦へ…扇久保博正35歳が語った“覚悟と勝算”「思い切り殴ってくるから、たぶん初詣には行けないだろうな」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2022/12/29 17:03
2018年7月、扇久保博正(左)は『RIZIN.11』で堀口恭司に判定負け。修斗時代にも一本負けを喫しており、大晦日の『RIZIN.40』で3度目の正直に挑む
扇久保博正が味わった「格闘技の天国と地獄」
堀口戦が決まってから、私生活では最高にハッピーな出来事があった。11月26日の午前4時25分、新たな生を授かったのだ。扇久保は「妻が12時間苦しんだ末にやっと産まれたので、めっちゃうれしかったですね」と相好を崩した。
「3100gの男の子でした。いまは妻のお父さんに似てますね」
名前は「太陽のように明るい人間になってほしい」という願いを込め“陽悠(ひゆう)”と名付けた。あれ? 扇久保の入場テーマ曲である吉田拓郎の『落陽』の一文字をとっているではないか。曲との関係性は?
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「気がついたら、そうなっていました(笑)。全然意識していなかったけど、名付けたら落陽の“陽”だった。将来は格闘技をやらせようと思っています。最初は(扇久保の格闘技のベースになっている)空手ですかね。奥さんも賛成しています」
勝敗ひとつで天国と地獄の往復を繰り返す。それが格闘技のシビアな本質だ。去る9月25日の『RIZIN.38』で組まれたキム・スーチョル戦のために制作されたPVでは、披露宴で幸せの絶頂を迎えた扇久保が描かれていた。しかしながら肝心の試合では眼窩底骨折というケガを負い、完敗といっていい判定負けを喫した。
スーチョル戦は昨年大晦日の『RIZIN.33』(バンタム級JAPANグランプリ)以来、9カ月ぶりの再起戦。同グランプリ決勝では朝倉海へのリベンジに成功するとともに優勝を果たした。おまけに試合後はリング上で公開プロポーズを実行し彼女からOKをもらった。一晩でいくつもの幸福を手にした扇久保だったが、再起戦で“ゼロ”に戻ってしまった。
その件を突っ込むと、扇久保は「そうですね」と苦笑しながら頷いた。
「でも、それも格闘技だと思いますね。僕にとって格闘技は仕事。煽り映像では自分の人生を“ここまで見せていいのか”と思うくらい見せている。もちろんどんな試合でも負けるつもりはないけどね。仮に負けたとしても、その姿をお客さんに楽しんでもらえればいい」
キャリアを重ねるにつれ、思考法にも変化が出てきた。最近は落ち込む時間は無駄と捉えるようになってきたという。
「負けを引きずるというのは、少なくともこの仕事をやっている身としてはそんなに必要ないんじゃないですかね」