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3度目の堀口恭司戦へ…扇久保博正35歳が語った“覚悟と勝算”「思い切り殴ってくるから、たぶん初詣には行けないだろうな」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2022/12/29 17:03
2018年7月、扇久保博正(左)は『RIZIN.11』で堀口恭司に判定負け。修斗時代にも一本負けを喫しており、大晦日の『RIZIN.40』で3度目の正直に挑む
加齢との闘いも「練習の仕方を変えるしかない」
扇久保といえば身体の頑丈さが売りだったが、30歳を過ぎるとケガも多くなってきた。先のスーチョル戦だけでなく、昨年6月13日の春日井“寒天”たけしとのバンタム級グランプリ1回戦では拳を骨折した。
「今まで骨折なんかしたことなかったんですけどね。しかも、ケガをしたら回復が遅れるようになった。朝倉海との初戦(2020年8月10日)あたりから、そういう感じになってきていますね」
前述した昨年大晦日の『RIZIN.38』でも、1日に2試合(バンタム級グランプリの準決勝と決勝)というハードなスケジュールがたたり、再起に9カ月も要した。どれほど節制した食事をとろうと、どれほど優れたサプリメントをとろうと、年齢には逆らえない。
「だったら練習の仕方を変えるしかない。実際、試行錯誤しながら、かなり変えていっている。自分に合ったやり方を見つけるために」
さらに扇久保は「昔の練習を追い求めていると身体が壊れる」と吐露した。
「結局、昔の練習を実践したら、そのせいで休む。それを繰り返していると、コンディションはどんどん下がっていきますからね」
キャリアを積み重ねるにつれ、扇久保が下した結論は「ケガをしないやり方でやっていくしかない」というものだった。
「自分でいうのもなんですけど、昔の僕はたぶん組み技も含め日本で一番スパーリングの量をこなしていたと思う。20代後半まではとにかくスパーリングをやっていました」
そうした最中、扇久保は2度に渡って堀口と対戦した。試合の映像を見返すことは?
「うーん、見返すことはほぼないですね。でも、思い返すことはあります」
「こんな辛いことはもうやりたくない…」
とりわけ堀口を挑戦者に迎えて臨んだ、2013年3月の修斗世界フェザー級(当時は60kg以下)タイトルマッチはトラウマのように脳裏に焼きついている。最後はチョークで仕留められたが、それまでも堀口のワンサイドゲームだった。扇久保は「本当に相手に呑まれていた」と思い返す。
「格闘技をやっている人間として、一番屈辱的な試合だった。堀口選手のことを大きく見すぎて何もできずに敗れたので、試合前とかに思い出すことはありますね」
この一戦で扇久保にはある決意が芽生えた。
「もう、ああいう自分には絶対ならない」
その直後、扇久保はもともと痛めていた右手首を手術している。翌2014年、VTJからトーナメント出場のオファーが舞い込んだ。奇しくも階級は今回と同じフライ級だった。
「リスタートとして、新たな階級でやろうと思いました」