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紀平梨花(20歳)が2年ぶりの全日本フィギュアで示した復活ロード「不運は自分で作ったもの」「来年は生まれ変わったような自分を…」
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2022/12/29 17:02
全日本フィギュア選手権に出場した紀平梨花。2年ぶりの舞台は合計188.62点で11位だった
「まだまだ自分の状態じゃない。いまは違う自分の中にいました。本当の自分はこんなものじゃないと、自分でも感じています。時間をかければ良いものが出来る。来年は新たに生まれ変わったかのような自分をお見せしたいです」
「梨花の才能は、誰もが認めるもの」
オーサーコーチは言う。
「今の梨花に必要なのは、しっかりと休む期間。彼女の才能は、誰もが認めるもの。氷に戻れば、回復が早いことも証明しました。トロントに戻ってきたら、どうやってジャンプの練習をさせないかを考えます(笑)」
年明け以降の主要大会への派遣は逃したが、むしろ3年後を見据えれば、必要な休養になるだろう。
「もう1年、怪我と過ごしてきました。やりすぎずに、でも追い込みを掛けるのは大変。でも慣れました。自分を信じてやるしかないです」
そう語る笑顔を見て、今年4月、復帰に向けて顔を見せたときの彼女の言葉を思い出す。
「ポジティブに持っていけない状況だから、なにごとも無理矢理そう捉えるようにしていました。五輪をテレビで見て『ここに出られたんだけどなあ』と少しはよぎりましたが、それぞれの人生がある。皆が目指してきた場所なんだから、という思いで応援しました。私はまず怪我を治して、来季、そしてずっと長く活躍できるほうがいい。気持ちに波があるけれど、そう考えるようにしてきました」
彼女は、強く進化していた。18歳までのジャンプの天才少女ではなく、どんな怪我も不運も受けとめて進むポジティブさがあった。3年後の全日本選手権を笑顔で迎えるために。紀平はにっこりと笑って、2022年全日本選手権の会場を後にした。
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