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紀平梨花(20歳)が2年ぶりの全日本フィギュアで示した復活ロード「不運は自分で作ったもの」「来年は生まれ変わったような自分を…」 

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野口美惠

野口美惠Yoshie Noguchi

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photograph byAsami Enomoto

posted2022/12/29 17:02

紀平梨花(20歳)が2年ぶりの全日本フィギュアで示した復活ロード「不運は自分で作ったもの」「来年は生まれ変わったような自分を…」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

全日本フィギュア選手権に出場した紀平梨花。2年ぶりの舞台は合計188.62点で11位だった

「全日本は、今季そこに合わせようと思っていた大会。計画的に、高い点数を取れるジャンプ構成を組んで、練習していきたいです」

 それから1カ月。トロントに戻った紀平が立てた目標は、ショート70点、フリー140点。ジャンプ構成としては、ショートは「3回転サルコウ+3回転トウループ」を入れ、フリーは「3回転ルッツ」を新たに加えて、「3回転フリップ」を2本に増やすことだった。

 しかし右足首の疲労骨折にとって、ルッツはかなり怖さのあるジャンプだった。フリップも右足トウを突くのだが、左足を滑らせて回転を起こすため、右足は軽いきっかけに過ぎない。しかしルッツの場合は、右足トウを突きながら上半身のひねりが起きるため、右足首に負担がかかるのだ。「痛みが出ないよう、怖さもあるので、徐々に練習したい」と思っていた12月中旬、右足首に痛みが走った。

「日本への出発2週間前に、右足首をまた痛めてしまって、4日間はジャンプはお休みして、出発1週間前から2回転ルッツを練習して、出発前日に1発だけ3回転ルッツを決めました」

 つまりトロントでの最終日に、1本だけ3回転ルッツを成功。そんな成功率で試合に組み入れようと考えていたことが驚異的だった。

6分間練習は絶好調も、本番で思わぬ不運が…

 そして始まった全日本選手権。ショートの6分間練習では、「3回転サルコウ+3回転トウループ」が絶好調。何度も「3回転+3回転」を軽やかに決め、そのたびにオーサーコーチもリンクサイドでおおきくうなずいた。

 ところが本番、思わぬ不運が起きた。サルコウを跳ぼうとした瞬間、自分が練習で作った溝にハマってしまったのだ。

「6分間練習の時に、そこで跳んでいたのは自分です。溝に入ってしまって、身体がガボっとなってジャンプの軸が傾いてしまいました。(続けて)2回転しかつけられない降り方でした」

 一見して、3回転サルコウは練習の時とは違う斜めの回転軸。むしろ着氷して2回転トウループを付けただけでも、気力のなせる技だった。

 しかしその不運を、あえて自己責任と捉えた。

【次ページ】 演技中に「すべてを悟って受け入れたという感じ」

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