それでも、林氏はまだまだ伸びしろがあると饒舌に話す。カタールでも散見したボールロストは、改善の余地がある。慣れない1トップで難しい面があったかもしれないものの、前線で起点はうまくつくれなかったのは事実だろう。

「さらに上を目指すのであれば、ポストプレーの質と量を上げたほうがいいです。大然が活躍すればするほど、相手は背後のスペースは消してくると思います。そのとき、アタッキングサードに入る手前のエリアで、何ができるかが問われるはず。足元に入ったボールを簡単に失わなくなってくると、もっと面白い選手になってきます。世界を見渡しても、大然ほどのスピードと体力を持った選手はそういませんから」

©︎Kiichi Matsumoto/JMPA

目指すべき選手像はアルバレス

　無類の海外サッカーマニアが言うのだから説得力がある。中学校時代から毎年更新される欧州サッカーの選手名鑑を隅から隅まで読み込み、「知識量では誰にも負けない」と豪語する林氏は、カタール・ワールドカップに出場した選手の情報もほとんど頭に入っている。身長、体重まで空で言えるのだから筋金入り。世界のサッカーに精通する解説者に強いて前田に似ているタイプを聞くと、ワールドカップ優勝メンバーの名前を挙げてくれた。

「アルゼンチン代表のFWフリアン・アルバレスかな。大然よりも技術は高いですが」

　現在、売出し中の22歳。今夏からジョゼップ・グアルディオラ監督が率いるイングランドのマンチェスター・シティでプレーしており、言わずと知れた世界のトッププレーヤーだ。旬な25歳にも“ステップアップ移籍”の期待がかかるが、林氏は落ち着いた口調で現状を分析していた。

「プレミアリーグ行きはまだ少し早いと思います。次はドイツのブンデスリーガ上位クラブあたりに移籍してほしいですね。縦に速いサッカーをするライプツィヒ、レバークーゼンなどに行くとはまるかもしれません。そこで活躍して、3大リーグ（プレミアリーグ、ラ・リーガ、セリエA）のトップクラブでプレーしてもらいたい」

　圧倒的な情報量とロジカルな戦術分析で評価を高めている林氏は、ビッグマッチでかわいい後輩の試合を解説する日を楽しみにしている。

12月28日、第19節ハイバーニアン戦で見事なミドルシュートを決めた前田大然　©︎Getty Images

「アーセナルvsトッテナムのノースロンドンダービーとかね。あと2年、3年くらいで、ビッグクラブにチャレンジしてほしい。僕はいま東京大学で監督も務めていますが、将来はプロの監督になるつもりです。それまでに解説できるといいですね（笑）」

　近い将来、画面越しに復活する出世した“H＆Mコンビ”を楽しみに待ちたい。

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