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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
20歳の前田大然が“11個上の先輩”にメラメラしてた覚醒前夜「陵平さんに負けたくない」元相棒が“鬼プレス”より好きだった“メンタル”
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byJ.LEAGUE
posted2022/12/29 11:06
水戸ホーリーホックの“H&Mコンビ”としてJ2リーグを席巻した林陵平と前田大然(2017年)
林氏がヘディングでそらしたボールを敵陣で拾った前田は、持ち前のスピードでマーカーを完全に置き去りにする。ゴール前に運んでからも圧巻。右サイドからカットインして相手をかわし、豪快に左足でネットを揺らしたのだ。
「あの1点は最も衝撃的でした。ミスも多かったし、雑なプレーもあったけど、意外にシュートはうまかったんです。練習から利き足ではない方でも振れていましたしね。FWにとって、両足で迷いなくシュートを打てるのは重要な能力です」
本人は横浜F・マリノス時代に苦笑しながらこう話していた。
『右よりも左のほうが力まずに打てるんですよ』
クロアチア戦でのゴールが左足だったことも、偶然ではないのかもしれない。林氏に水を向けると、当時を懐かしみ、うれしそうにうなずいていた。
「ポテンシャルの高さはあのときから感じていました。それこそ、かなり上のレベルまで駆け上がっていくだろうなって。スピード、体力だけではなく、メンタルも強かった。一度シュートを外しても動じないし、環境にも左右されず、気持ちがブレなかったから。海外でもやっていけるなと」
4年後にJリーグ得点王…驚きはない
17年シーズン限りで水戸を離れ、松本山雅FC、マリティモ(ポルトガル)を経由し、21年に横浜FMで23ゴールを挙げてJ1得点王を獲得したときも、大きな驚きはなかった。
「チャンスの回数が増えれば、取ると思っていました」
現在はセルティック(スコットランド)でコンスタントに得点を重ね、ヨーロッパで新たなキャリアを歩み始めている。昨季はシーズン途中加入でリーグ戦16試合に出場し、6得点。かつてに比べると、クロスへの入り方など、ストライカーとしての成長ぶりが見て取れる。ワールドカップでも、その一端が垣間見えた。オフサイドで取り消されたドイツ戦の“幻のゴール”は、カウンターからうまく空いているスペースに走り込んでセンタリングに合わせたものだ。
「ヨーロッパではスピードだけで通用しない部分もあったと思います。ニアサイドに行くふりをして、ファーサイドに流れたり、ゴール前での駆け引きは洗練されてきました」