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W杯最多イエロー18枚乱発にメッシ「試合前から心配してたんだ」“嫌われた主審”の正体…なぜ“不思議と高い評価”を保っていたのか
posted2022/12/24 11:09
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
Kiichi Matsumoto/JMPA
毎度のこととはいえ、ワールドカップ(W杯)カタール大会ではレフェリーに対する不満の声が多かった印象がある。
中でも悪い意味で世界中にその名が知れ渡ったのが、スペイン出身のアントニオ・マテウ・ラオス主審だ。
メッシ「FIFAもこうなることを想定すべきだった」
彼は主審を務めた準々決勝オランダ対アルゼンチン戦にて、ワールドカップ史上最多となる18枚のイエローカードを提示したことが話題となった。
ただそれ以上に彼の評判を傷つけたのは、他でもないリオネル・メッシが発した痛烈な批判だ。
「彼のことは知っているので、試合前から心配していたんだ。FIFAもこうなることを想定すべきだった。これだけ重要な試合にあのようなレフェリーを起用すべきじゃない。然るべきレベルにないのに。
レフェリーが試合を延長戦に持ち込み、自分たちは不当に苦しむことになった。彼はいつだって自分たちに不利な判定を下す。最後のプレーはファウルではなかった」
この時メッシが口にしたのは、マテウが後半に10分ものアディショナルタイムを加えたこと、そしてオランダの同点弾につながるフリーキックを与えたファウル判定への怒りだった。
オランダのデヨングも“パレデス蹴り込み事件”に不満
一方、オランダのフレンキー・デヨングも試合後にマテウへの不満を口にしている。
「後半が終了した際、アルゼンチンの選手たちが揃って主審に詰め寄ったことで、そこからは全てアルゼンチン寄りのジャッジになった。ルーク・デヨングが普通にヘディングしただけで笛を吹く一方、向こうの選手が自分たちのベンチにボールを蹴り込んでも気に留めない。メッシが手でボールを弾いてもお構いなしだ」
この試合の88分、レアンドロ・パレデスが警告相当のファウルを犯した上、オランダのベンチへとボールを蹴り込んだにも関わらず、マテウは1枚の警告しか提示しなかった。55分にメッシが手で相手のパスをカットした際にも、警告が“免除”されている。
デヨングはその2点と共に、延長戦を通してハイボールを競り合うたびにオランダのFW陣がファウルを取られたことを指摘したのだった。