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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
〈清原和博の次男も在籍〉慶應義塾高は勉強も野球も「特別扱いなし」…森林監督が語る「難しいけど、それがかっこいいぞ」
posted2022/12/24 06:00
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kou Hiroo
東急電鉄日吉駅東口を出ると、目の前に慶應義塾大学日吉キャンパスが広がる。美しい並木道、白亜の学舎を越えてさらに行くと急な下り坂。これを降りてテニスコートを横目に坂道を上がると慶應義塾高校日吉台野球場に至る。最近、筆者はこの球場に来ることが多くなった。
慶應義塾高校の森林貴彦監督に話を聞く機会が増えたからだ。
推薦入試制度は、一般的なものとは少し異なる
森林監督率いる「塾高」は、秋季大会で好成績を挙げ、来春の選抜大会への出場が有力視されている。
慶應義塾は1915年、「夏の甲子園」の前身である「第2回全国中等学校優勝野球大会」に出場した 古豪中の古豪だが、1962年夏の大会を最後に40年以上も甲子園に出場していなかった。
この時期の慶應義塾高校は「推薦入学」「特待生」のような制度は一切ない。内部進学以外では一般入試を突破しなければ、どんなに優秀な選手でも入学を許されなかった。
「慶應義塾高校は、それまで一般入試と帰国子女の入試しかなかったんですが 、2004年、推薦入試制度が導入された。 その1期生の活躍で、2005年慶應義塾は43年ぶりに春の甲子園に出場しました。慶應義塾高の野球部が再び強くなったのは、その頃からですね。だからそろそろ20年になります」
とはいっても慶應義塾高の推薦入試制度は、一般的なものとは少し異なっている。
「推薦入試は学校全体で40人くらいです。慶應義塾は1学年で400人くらいいる大きな高校ですが、そのうち約1割程度。まず書類審査がありますが、9教科で38以上。つまりオール4で5が2つ以上、それに加えて学業以外の顕著な実績が必要というレベルです。文科系ならピアノコンクールで好成績を収めた、バイオリンで賞を取ったなどです。有望な中学生をこちらから指定して“この人とこの人をお願いします”といったことは一切ありません。勉強のレベルが一定程度に達していなければ……ですね」
入り口の段階で生徒の資質をしっかり見るしかない
こういった書類審査を経て、面接と作文になる。
「個人面接と集団面接があります。志望理由をはっきり話すことができて、作文の出来も良かった子が受かります。野球の実績や選手としての能力は、ほとんど考慮されていないんです」
一般的な推薦制度とは異なっているが、この入試をクリアして入ってきた選手たちが、甲子園を狙えるような実績を築いてきたのだ。そして入学以降についても、こう語る。