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[37歳主将の献身]クロアチア「モドリッチが祖国に残したDNA」
posted2022/12/23 07:03
text by
長束恭行Yasuyuki Nagatsuka
photograph by
Kenichi Arai
クロアチアの歴史を塗り替えることはかなわなかったが、モドリッチの運動量と戦う姿勢はすべての選手から尊敬された。彼の自伝の翻訳も手掛けた筆者が、その胸中に迫る。
「クロアチアは小さな国だが、誇り高き国だ。歌いもしなければ踊りもしない。走り続けて緊張が緩むことはない。彼らは戯れることはせずに闘う。W杯タイトルに至る道中、あなたを襲う最悪の対戦相手の一つがクロアチア。あのチームは決勝トーナメントで“戦艦”に変貌する」
これはFIFAランク1位のブラジルを準々決勝で沈めた直後の『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙のクロアチア評だ。
4年前のロシア大会。決勝トーナメントでは常にビハインドを背負う厳しい試合が続いた。デンマークとロシアはPK戦で退け、イングランドは延長戦のマリオ・マンジュキッチのゴールで駆逐した。フランスとのファイナルでは優勢に試合を進めるも、主審がアントワン・グリーズマンのダイブを見破れず、厳しいハンド判定も食らって前半に2失点。それでも諦めずにピッチで闘い続ける姿が世界中のサッカーファンの胸を打った。大会MVPに選ばれたルカ・モドリッチは、自伝『マイゲーム』の中でこう振り返る。
「心にあった感情は悲しさだけだった。キャリアでもっとも幸せな瞬間になるはずなのに、そうじゃなかったんだ。W杯のファイナルに敗れ、まだ試合の余韻で火照っている。頭をもたげることといえば、『終わってしまった』という思いだけだった」