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“4軍の右腕”はなぜドラフト1位になれた? 楽天・荘司康誠のマンガみたいな覚醒の舞台裏「ゼロイチは苦手だけど、吸収力が抜群」
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byKYODO
posted2022/12/21 17:32
ドラフト1位で楽天に入団する荘司康誠(立教大)。188cmから繰り出す伸びのあるストレートが魅力の期待の右腕だ
思い通りにボールを投げられる喜びが、荘司を一気に加速させる。
20年11月22日に静岡県で行われた第3回大学野球オータムフレッシュリーグでは自己最速を大きく上回る149キロを計測。
年明けには「速い変化球を投げたい」という要望があったため、北川氏は投げ方を伝授。ストレートをしっかり叩いて投げられるようになっていたため、スライダーを横に撫でるように投げないことを矯正。スプリットも落とそうとして肘を下げるのではなく、ボールの中心に力が伝わる挟み方を教えたところ、それもすぐにハマった。
「荘司のすごいところは、ゼロからイチにするのは苦手なんですが、“こういうことだよ”と原則や理屈を理解すると、自分で応用し調整していける器用さと賢さがあるんです。彼のためになることを考えれば考えるほど、それに応えてくれる選手でした」(北川氏)
球速が出たことで、周りの見る目も変わってきた。もちろん、その後も苦労や困難は多かったが、それを乗り越える人間力も荘司は備えていた。
「投げられなかった時期があったからこそ、“投げられるだけでも素晴らしいことなんだ”という感謝の気持ちを(荘司から)感じますね」(北川氏)
「荘司は将来像を描くのが上手」
荘司は、2022年初頭には「ドラフト1位になる」という高い目標を公言。北川氏とともにそこに向かって二人三脚で真摯に取り組んでいくと、4月には公式戦初勝利、7月には侍ジャパン大学代表の先発ローテーション入り、8月には東京六大学野球のオールスターゲームで自己最速を更新する157キロを記録するなど、とんとん拍子でドラフト最前線まで這い上がってきた。
そして、10月に本当に目標を叶えてしまったのだった。