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“4軍の右腕”はなぜドラフト1位になれた? 楽天・荘司康誠のマンガみたいな覚醒の舞台裏「ゼロイチは苦手だけど、吸収力が抜群」
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byKYODO
posted2022/12/21 17:32
ドラフト1位で楽天に入団する荘司康誠(立教大)。188cmから繰り出す伸びのあるストレートが魅力の期待の右腕だ
大きな懸念材料となっていたのは入学してからずっと痛みを感じていた右肩だ。
いくつもの病院へ行っても「骨などには異常がない」「もう投げられるのでは?」と診断されるが、痛みは取れず、ボールを投げることさえ叶わないでいた。
そんな荘司が「藁にもすがる思い」で助けを求めたのが、北川雄介トレーナーだった。
北川氏はパフォーマンス向上を目指すマンツーマンレッスンを行い、プロ野球選手やドラフト候補選手、強豪校からも厚い信頼を置かれている人気トレーナー。大学の先輩から紹介された北川氏との出会いが荘司の運命を大きく変えた。2020年10月20日、眩いばかりのフラッシュライトに囲まれることになるちょうど2年前の出来事である。
「大学生活を振り返ると、北川さんにお会いできていなければ、あのままくすぶって終わっていた。北川さんがいなければ今の自分はいないかなと思います」
「矯正したら、肩の痛みが一発で治った」
北川は初めて荘司がやってきた時のことを今も正確に覚えている。
「投げる姿を見ていて“球をリリースする時に力が逃げているな”と思ったんです。ストレートは2本の指(人差し指と中指)から離して投げますが、中指にしかボールがかかっていなかった。それで両方の指にボールがかかるように、肩と背中にかけて矯正したら、肩の痛みは一発で治ったんです」
まるで魔法みたいに聞こえるが、敏腕トレーナーの慧眼と献身があってのもの。右肩の痛みが治ってからも、荘司は心身ともにサポートを受け続けた。北川氏は続ける。
「右肩が痛いから肘をちゃんと上げて投げないといけないと思っていたんです。だけどそう思いすぎて、肩が上に持ち上がって、肩甲骨がちゃんと胸郭に乗っていなかった。だから、スクワットで肩甲骨をしっかりはめるようにすることや、両方の指にかかるように握り方など手の調整をしました」
北川氏との出会いから4日後には、約半年ぶりの本格投球にもかかわらず142キロを計測。その試合後には北川氏のもとに「楽しく投げられました!」と感謝のメッセージが届いた。