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「勝ちに飢えた大谷翔平の気迫が…」地獄の14連敗を止めた101マイル…番記者のペンも心も震えた“投手・大谷”の2022年ベストゲーム
posted2022/11/28 11:00
text by
阿部太郎Taro Abe
photograph by
Getty Images
11月17日。
2022年のシーズンMVPが発表される番組に、最終候補として出演したエンゼルスの大谷翔平は今季を振り返り、こう言った。
「今年は投手の年だった」
取材者としての自身の心に刻まれたシーンを辿ると、パッと頭に浮かぶのはやはり「投手・大谷」だ。
そして、あの試合は鮮明に思い出す。
6月9日、本拠地で迎えたレッドソックス戦。シーズンが終わって、スコアブックを見返すと、「ほえた」、「ガッツポーズ」と汚い字で何箇所も書いていた。
勝ちに飢えた大谷の気迫が、何度も表情や仕草に表れた試合だった。
エンゼルスを襲った「嵐」…球団ワーストの14連敗
エンゼルスのクラブハウスの入り口に電子掲示板がある。
当日のスタメン表とともに、いつもヘッドコーチのレイ・モンゴメリーがチョイスする格言が添えられている。英語表記の上には、日本語でもその訳がつけられるのがお決まりだ。
その日は日本語でこう書かれていた。
「嵐から永遠に逃れることはできません。あなたはそこに立ち向かうことを学ぶ必要があります」
チームにはまさに、大きな「嵐」が襲いかかっていた。
5月下旬から、いきなり連敗地獄にはまった。
勝てないチームに、ペリー・ミナシアンGMら上層部とジョー・マドン監督は対立して不協和音が生まれ、6月7日には電撃的にマドン監督は解任された。
4、5月に快進撃を見せたチームの急落。クラブハウスにはなんとも言えない、負の空気が充満していた。
「全てが監督のせいというのはもちろんない。自分自身の調子が上がらない。申し訳なく思う」
マドン監督が解任された日の大谷の言葉は、全ての選手の気持ちを代弁していた。
フィル・ネビン監督代行になっても、変わらない流れ。
球団ワーストの14連敗で迎えた6月9日。大谷は本拠地のマウンドに立った。