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ブラジルの“日本vsドイツ報道”がカオス…手の平返し絶賛と「ネイマールのゲラゲラ風刺画」、“ナゾ走りDF”に「何を笑ってるんだ」
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2022/11/26 11:03
日本にとって歴史的勝利のドイツ戦。ブラジルではどう伝えられた?
「後半の日本の戦術変更が、ドイツを混乱させた。また、ドイツ選手に疲労の色が見え始めた頃に日本の森保一監督は矢継ぎ早にアタッカーを投入。試合の流れを引き寄せた」
日刊紙『オ・グローボ』は、両チームの選手交代について言及した。
「日本の選手交代は、極めて効果的だった。一方、ドイツはギュンドガンがいなくなって中盤の優位性が大きく損なわれたし、(ジャマル・)ムシアラを交代させてから創造的なプレーが影を潜めた。選手交代は、全くの逆効果だった」
そして『ランセ!』はこの試合を以下のように総括した。
「スピードと運動量を存分に発揮して、日本がドイツに歴史的な逆転勝ちを収めた。世界のフットボールの巨人を相手に、常識では考えられないような勝利を収めた」
“ナゾ走り”ルディガーに「何を笑っているんだ」
試合前に日本の敗戦を予想したSporTVの解説陣も、「日本の見事な逆転勝ち。(2014年大会でブラジルが大敗を喫した)ドイツを倒してくれて、溜飲が下がった」と完全に手の平を返した。スポーツ電子版の「グローボ・エスポルチ」は、長友佑都がインタビューで喜色満面で「ブラボー!」と三度叫ぶ動画を掲載した。
また、まだドイツが1-0で勝っていた状況でドイツのCBアントニオ・ルディガーが右サイドに出た日本の縦パスを浅野と競り合い、両足の太ももを上げる滑稽な走り方をして競り勝って笑顔を浮かべている動画を紹介。「彼は何を笑ってるんだ」と皮肉った。
ブラジル人にとって、宿敵アルゼンチンと因縁の相手ドイツが今大会初戦で敗れたことは大いなる喜びだ。
『ランセ!』は「初戦で大恥をかいてしまった」と嘆くドイツ人をアルゼンチン人が「アミーゴ、君の気持ちは良くわかるよ」と言いながら抱き締めて慰め、その光景をネイマールが呵々大笑しながら眺めている風刺画を掲載した。
日本、ドイツと同組のスペインがコスタリカに7-0と大勝すると、TVグローボの男性アナウンサーは「27日に日本がコスタリカに勝ち、スペインがドイツを倒したら、GS2戦目にして早くもドイツの敗退が決まります」と嬉しそう。解説者も「そうなれば、2026年大会まで彼らとはお別れだね」と相槌を打った。
ブラジルの対日感情は、極めて良好だ。日本が憎きドイツを倒したことを、ブラジル人たちは我が事のように喜んでいる(その後ブラジルも、リシャルリソンのスーパーゴールなど2-0でセルビアに勝利した)。
彼らがいつも日本と日本代表へ示してくれる好意を考えると、TVグローボが犯した小さなミスを殊更にあげつらうのは、人倫にもとるのかもしれない……。
<イタリア編につづく>
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。