「結局、みんな“トラブル”が見たいんですよ」

「あいつ面白いな」かもしれないし「頑張ってほしい」かもしれない。「負けるところが見てみたい」もありうる。視聴者はオーディションを通して参加者に何かしらの興味を抱いているのだ。それを感情移入と呼んでもいいだろう。未来は、マッチメイクのポイントを負けた時に失うものの大きさだと言っている。「オーディションや会見であれだけイキがって、試合で負けたら大恥だぞ」と思わせれば、それだけ試合への注目度が高まるわけだ。

　オーディションシステムの成功を受けて、未来はこう言っている。

「結局、みんな“トラブル”が見たいんですよ」

　なかなか反論しにくい言葉だ。『BreakingDown』は見る者の野次馬心を刺激するということだ。参加者については「不良って良くも悪くもオーラがありますから」。ハッタリをかますといった部分も含めて、相手を怖がらせたり逆に惹きつけたりする能力に長けているのが不良だと。個人的にはあまり近づきたくないが、しかしヤクザ映画や不良漫画はいつの時代も人気がある。実はフィクションの世界と同様、『BreakingDown』でも“本当に強いヤツは無闇に騒がない”といった空気が共有されている。乱闘が目立てば目立つほど、暴れないでどっしり構える人間がカッコよく見えるのだ。それは皮肉ではなくて、アウトローたちの常識なのだろう。

悪い意味でも目立った“女子同士の闘い”

　大会中継はPPV、有料配信だ。その当日までに、出場者は視聴者にとって“知らない素人”ではなくなっている。頻繁にYouTubeで見ているから、「UFCのチャンピオンは知らないけどこめおや10人ニキ（BreakingDown常連）は大好き」となっても不思議ではない。因縁の結末を見るために視聴者は課金し、その人数は大会ごとに増えていった。

　11月3日の第6回大会は一時サーバーがダウンするほど注目を集めた。悪い意味でも目立ったのは女子枠だ。ともにグラビアで活動する緒方友莉奈とみらたむがオーディションから罵倒しあい、さらに乱闘。前日の会見でも罵り合いが止まらず、未来が呆れてストップをかける事態になった。完全にコントロール不能。そうなるとやはり「どっちが勝つんだ（負けるんだ）」という興味も湧いてきてしまう。

ともにグラビアで活動する緒方友莉奈（左）とみらたむ　©Norihiro Hashimoto

　へずま嫁vs.坂口杏里というカードも『BreakingDown』ならではだろう。へずまとは“迷惑系YouTuber”として知られたへずまりゅう。今回は本人ではなくその妻が参戦してきた。坂口杏里は俳優・坂口良子の娘として芸能界デビューし、AV出演や恐喝未遂容疑での逮捕などでも話題になった。いや、なんでこの2人が格闘技で闘うんだと思うが、しかしつい見てしまうというところはあるのだった。

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