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乱闘に低レベルの試合も…異色で下世話な格闘技『BreakingDown』がウケる理由は? 朝倉未来「みんなトラブルが見たいんです」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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posted2022/11/27 11:03

乱闘に低レベルの試合も…異色で下世話な格闘技『BreakingDown』がウケる理由は? 朝倉未来「みんなトラブルが見たいんです」<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

オーディションや会見では乱闘が頻発。それも含めて『Breaking Down』は話題になっている

前日会見で起きた、あっていはいけない“事件”

 今大会の前日会見では、あってはいけない“事件”も起きた。出場者が対戦相手にイスで殴りかかり、出血させてしまったのだ。会見は生配信されていたから、SNSでも大変な騒ぎになった。試合は中止となり、“加害者”は頭を丸めて大会中に謝罪している。ただ“被害者”はあらためて試合をしたいと申し出ており、2人の対戦は今後の大会で組まれることになりそうだ。道を踏み外した者にやり直すチャンスを作るのも『BreakingDown』だと。

 実はこれまでのオーディションでもイスを投げたり蹴り飛ばす者がいた。緒方もケガをしている。相手は酒を飲んでオーディションに参加していたそうで「論外」としか言葉が出てこない。“暴れて目立てばいい”というムードが、早くも行き着くところまで行ってしまった感がある。今後は行きすぎた行為を禁じる通達、同意書へのサインなどを検討していくという未来のコメントもあった。

「子供達が見る影響を考えて欲しい」

 そうツイートしたのは武尊だ。まったくもってその通りだと思う。ただ子供たちに見せたくないのは、モノを使って殴りかかることだけだろうか。筆者の感覚だと“素手”の乱闘だってダメだ。

「どこまで許容するのか」の基準は

 武尊と那須川天心の試合が行なわれたメガイベント『THE MATCH 2022』の会見でも乱闘はあった。K-1では公式に乱闘を禁じ、試合中止も含めたペナルティが設けられている。そうなったのも乱闘が頻発し、選手の自制に任せてはいられなくなったからだ。

 乱闘については『BreakingDown』以前から「話題になる」、「YouTubeが“回る”」と歓迎するような関係者がいた。しかし“殴る蹴る”が得意な、それを専門に練習している人間が乱闘をする=暴力衝動を抑えられないというのはとてつもなく恐ろしいことだ。それは素手だろうがイスを持とうが関係ない。

 あらゆる大会において、どこまで許容するのか、運営側も見る人間もそれぞれが何か基準を持ったほうがいいのかもしれない。たとえば“子供に見せられない”という基準で禁じたり批判したりするとして、では口汚い罵り合いはいいのか悪いのか。対戦相手に中指を立てるのはどうか。コロナ対策で“声出し”禁止の会場で選手に大コールを送る応援団、密を避けるための規制退場のアナウンスを無視して出口に急ぐ観客の姿は? これらはさまざまな団体で見られる。

『BreakingDown』が諸悪の根源だとは筆者は思わない。むしろ今の格闘技界の風潮を最も色濃く反映しているのが『BreakingDown』。武尊が指摘したのも「数字」を重視するあまりどんどん野放図になっていく業界の風潮だった。

【次ページ】 “1分間最強”というコンセプトの秀逸さ

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