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乱闘に低レベルの試合も…異色で下世話な格闘技『BreakingDown』がウケる理由は? 朝倉未来「みんなトラブルが見たいんです」
posted2022/11/27 11:03
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
まるで罵詈雑言の博覧会だ。
「クソみたいな顔ボコボコにしてやります」
「調子乗んじゃねえ、ブス!」
「プライベートで殺したるわ」
いま日本で最も勢いのある格闘技イベント、朝倉未来がプロデュースする『BreakingDown』は、出場者オーディションでの罵倒合戦と乱闘からスタートする。そこが“キモ”と言い切ってしまっていい。
1分1ラウンド(基本はキックボクシング)という独自のルールを未来が考案し、昨年旗揚げした『BreakingDown』。人気に火がついたきっかけは、今年3月の第4回大会からマッチメイクをオーディション制にしたことだという。
朝倉未来「試合決定で」はネットの流行語に
一般公募から選ばれたオーディション参加者には格闘家もいるが“不良”も多い。少年院や刑務所に入っていたという者も。一癖も二癖もある人間たちが自己アピールし、「ひな壇」の常連たちにケンカを売り、オーディション参加者同士でも「気に入らねえ、お前とやってやるよ」と睨み合う。朝倉兄弟を輩出した“不良格闘技”大会『THE OUTSIDER』の要素も、かつてテレビで人気を博した『ガチンコファイトクラブ』の要素もあると言ったら伝わりやすいだろうか。
対戦する者たちが舌戦を展開するのではなく、舌戦をきっかけに対戦が決まるのが『BreakingDown』だ。オーディションでの未来の「試合決定で」という言葉はマット界(ネット界)の流行語にもなった。要はほぼすべての試合が“因縁の対決”なのだ。一般的な格闘技では“競技がケンカの様相を呈する”ことがあるが、『BreakingDown』は“ケンカを競技の形式に落とし込む”と言ってもいい。対立の構図を煽る、オーディション動画の構成の巧みさも見逃せない。
下品で下世話、けれど結末を見たくなる
オーディションはYouTubeで配信され、話題になった参加者は未来、弟の海をはじめ大会に関係する人気YouTuberとのコラボ動画に招かれることも。試合で活躍した選手も同様だ。そうなればインターネット/YouTubeセレブリティの仲間入り。『BreakingDown』は、未来曰く「人生が変わる」イベントなのである。
だから参加者たちは出場権を得ようと必死でアピールする。人気者に噛みつき、暴れ、インパクトを残そうとする。罵詈雑言はより過激になり、乱闘も起こりやすくなる。その光景を醜悪だと感じる人もいるだろう。筆者も「下品だなぁ」と思う。いや下世話というのか。けれど下品で下世話なものは、人々の欲望と直結する。オーディションで始まった因縁、その結末を見てみたくなるのだ。