濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
乱闘に低レベルの試合も…異色で下世話な格闘技『BreakingDown』がウケる理由は? 朝倉未来「みんなトラブルが見たいんです」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/11/27 11:03
オーディションや会見では乱闘が頻発。それも含めて『Breaking Down』は話題になっている
“1分間最強”というコンセプトの秀逸さ
今回の“事件”があって、これからは『BreakingDown』の運営の仕方はより難しくなる気がする。人気の高まりもあって世間から“目をつけられた”状態だけに、下世話だからこそ好奇心を刺激するとも言っていられなくなるかもしれない。出場者のスキャンダルや大会以外でのトラブルも怖い。
ただそうなったとしても“1分間最強”というコンセプトの秀逸さは変わらない。オーディションシステムも、そもそもは新たな競技の可能性をバックアップするためのものだったはずだ。
1分という試合時間は極端に短い。その中で勝とうと思えば、とにかく前に出て手を出すのが最善だ。相手の出方をうかがっていたら、その間に1分経ってしまう。つまり試合がアグレッシブになる。細かい技術よりもガンガン殴るという展開は、誰が見ても分かりやすい。今後は世界進出を狙うという『BreakingDown』。MMAはすでにUFCという頂点が確立しているが、1分ルールという新たなジャンルならビジネス面でも太刀打ちできる可能性があると未来は考えているようだ。
セコンドには中井祐樹氏の姿も
“胸毛ニキ”のあだ名もついた八須のセコンドには、中井祐樹氏がついていた。桜庭和志と並ぶ日本MMA最大の功労者であり、日本ブラジリアン柔術連盟の会長でもある。そんな重鎮が『BreakingDown』の会場にいること自体が驚きだった。
ただ本人は特別なことだとは思っていないようだ。八須は中井氏が主宰する道場・パラエストラ東京で練習しており「(セコンドについたのは)メンバーですから」。
試合については「私も経験したことがないルールなので、大変な部分はあったと思います」。賛否両論ある『BreakingDown』のことを聞いてみると「1分間のコンペティションという以外の認識はないので」と言う。そこに興味や可能性を感じるとも。
「1分間だったらプロがアマチュアに負けるかもしれないという感じもあります。1分間の(有効な)闘い方もあるのではないかと思うのですが、それはまだ定かではない。未知の部分です」
「トラブルが見たい」以上の競技性が生まれるか?
1分間の闘いではスタミナや戦略といった要素が極端に削ぎ落とされる。従来の格闘技の常識が通じない部分で番狂わせが起きやすいのかもしれない。しかし選手層が厚くなり、大会を重ねると1分の中でも有効なセオリーや“うまく勝つ”ための駆け引き、効率のいい体力の使い方が生まれてくるかもしれない。2人組チームによる同時対戦や1分無制限ラウンドという試合形式もある。
実験を重ねながら、競技としていかに発展、成熟していくか。『BreakingDown』のもう一つのポイントはそこにある。「いくら3分5ラウンドのキックボクシングが強くても、5分3ラウンドのMMAでチャンピオンになっても、1分ルールでは質の違う強さが求められるから勝てない」というところまでいけば面白い。大会には喧嘩担当も“お笑い担当”もいて、もちろん実力派もいる。多彩なメンバーはさらに選りすぐりとなり、これから「レベルは勝手に上がっていくと思います」と未来。彼自身も、来年は『BreakingDown』に出場するそうだ。そこからまたイメージも競技性も変化して「トラブルが見たい」以上の好奇心を刺激するものになっていく可能性もある。というより、そうなるところが見たい。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。