「レベルの低い試合が多い」のに注目される最大の理由

　結果は緒方とへずま嫁が判定勝利。どちらの試合も、お世辞にも見応えがあるとは言えなかった。『BreakingDown』はよく「素人のケンカ」、「あんなものは格闘技ではない」といった批判をされるが、確かにレベルの低い試合が多い。今大会の後半戦、『THE OUTSIDER』で世に出た人気選手と『BreakingDown』トップ選手たちの対抗戦は内容も充実していたが、初心者レベルもしくはそれ以下という闘いも。

　けれど観客、視聴者が求めるのは“レベル”だけではないだろう。むしろ重要なのは先述したような感情移入だ。極端な話、スポーツ観戦において最も感情を揺さぶられるのは“自分の子供の試合”ではないか。知らない世界最高峰よりも知っている素人のほうが見ていて興奮するということはありうる。実力と人気、注目度は別物と考えたほうがいい。

へずま嫁vs坂口杏里　©BreakingDown

　大会には後藤祐樹も出ていた。元アイドル。素行が悪く芸能界を引退し、窃盗、強盗傷害で少年刑務所に収監された。ABEMAの企画『朝倉未来にストリートファイトで勝ったら1000万円』に参加したことから縁が生まれ『BreakingDown』のひな壇グループへ。フラフラになりながらも判定勝利を掴み取る姿は印象的だった。

　本人はあまり言われたくないのかもしれないが、こちらのイメージとしてはどうしたって「ごっちん（後藤真希）の弟」だ。逮捕されたことも知っている。そういう人間が人生のカムバックをかけて必死になって拳を振るっている。それを「レベルが低い」とバカにしても仕方がないだろう。どの格闘技イベントも同じだ。プロ大会にだってレベルの違いはある。選手には個々の背景があり、それぞれのレベルの中で勝ち負けを競い、そこにドラマが生まれる。

後藤祐樹（右）はフラフラになりながら判定勝利を収めた　©Norihiro Hashimoto

出場選手は「格闘家」か？

　大会中、実況アナウンサーがゲストのRISEファイター・YA-MANに聞いていた。「（選手たちを）もう格闘家として見ていいですか」。そういうレベルだという認識なのだ。一流のアスリートだとか、プロイベントに出ている選手よりも強いなどとは言っていない。謳っているのは“1分間最強”。ここにしかない独特なルールの中での強さだ。

　1分間なら自分でもなんとか闘えるかもしれない。アイツになら俺でも勝てるんじゃないか。レベルに関して言えば、そう思わせる敷居の低さが魅力だと捉えることもできる。格闘技人口を考えれば、敷居は低く間口は広いほうがいい。『BreakingDown』がきっかけで真剣に格闘技に取り組む者が出てくれば、それはそれでいい。多彩な人材を呼び込むことで、さらに注目度が上がるということもある。

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